2004 Fiscal Year Annual Research Report
談話の解釈のモデル化と解釈可能性に基づく日本語文法の構築
Project/Area Number |
15300090
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
白井 英俊 中京大学, 情報科学部, 教授 (10134462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 賢一郎 中京大学, 教養部, 教授 (20162753)
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Keywords | 日本語文法 / 談話構造 / 累加的構造解析 / 未確定記述 / 分節化談話表示理論 / 解釈のモデル / 形式意味論 / 動的統語論 |
Research Abstract |
本研究では自然言語の本質である「未確定記述」について理論的に考察した。これは、語彙において比較的に明瞭に現れ、談話や文脈などの情報と統合されることを通して(より)「完全」な形に形成される。このような語彙情報の統合過程は、分節化談話表示理論(SDRT)における談話構造の枠組みに準拠して明示化されうる。しかしながら、未確定記述は、自然言語の内在的仕組み自体にも深く関わっている。最近の言語理論では、自然言語の意味的側面だけではなく統語・構造的側面に対しても、未確定記述として分析する研究が活発に推し進められている。我々はRuth Kempson等が開発した「動的統語論」を取り上げ、日英語の類型論的違いを研究した。具体的には、日英語での「時制」の用法に関する基本的相違について、動的統語論の枠組みを日本語に拡張した。英語の動詞の「過去形/現在形(非過去形)」の対立は、必ずしも、日本語の動詞のいわゆる「タ形/ル形」の違いに対応するわけではないが、この事実についてこれまで組織だった分析は与えられていなかった。それに対し、言語の構造解析に(構造的)未確定記述を導入した動的統語論の枠組みを採用することによって、日英語の時制の用法の違いは、英語では時制概念が(統語的)「素性」として実現されているが、日本語では「接尾辞」として具現化されているという類型論的違いに還元されるという知見がえられた。さらに、その結果として、日本語における時制照応が、英語に比べて、はるかに柔軟でダイナミックであるという現象も明らかになった。今回は、日英語の時制の用法に関して主として単文での時制の対応を分析したが、今後は以上の方策を複文の中の時制についても拡張し、いわゆる「時制の一致」の現象等も分析する予定である。また、理論面においては、日本語文法の形式的解釈モデルを構築するうえで、以上の動的文法モデルとSDRTの談話統合モデルとの融合を目指す。
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Research Products
(7 results)