2005 Fiscal Year Annual Research Report
談話の解釈のモデル化と解釈可能性に基づく日本語文法の構築
Project/Area Number |
15300090
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
白井 英俊 中京大学, 情報科学部, 教授 (10134462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 賢一郎 中京大学, 教養部, 教授 (20162753)
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Keywords | 日本語文法 / 談話構造 / 累加的構造解析 / 未確定記述 / 分節化談話表示理論 / 解釈のモデル / 形式意味論 / 動的統語論 |
Research Abstract |
昨年度までの研究ですでに明確になったように、談話の(動的なコンテクストに基づく)解釈の成立過程では、自然言語の‘underspecification'(未確定記述)について真剣に取り組むことが不可欠である。未確定記術は語彙項目の記述だけではなく、スコープの作用域や、命題間に成り立つ修辞関係にも表れる。これが文脈などの情報に基づき、どのように解消されるかが動的コンテクストに基づいてもっとも適切な解釈をえる基本的なメカニズムであり、本研究では分節化談話表示理論に基づいて解釈の枠組みの提案と、具体的な適用例を通してその有効性を示してきた。しかし具体的にはどのような現象を未確定記述によるものと捉えるか、哲学的には言語知識と世界知識との切り分けをどのように行うかなどいろいろな問題をはらんでいる。これは自然言語の普遍的な特性だけではなく、個々の言語の類型論的な相違にも繋がる問題でもある。これに関して、日本語の助詞の「で」や「の」の解釈を語彙の意味の記述を含めてどのように考えることができるか、考察を行った。また、本年度は時制の解釈の成立過程についても研究を行い、日本語の談話解釈で広くみられる「コンテクスト・シフト」というメカニズムが、それらの言語においても体系的に想定される点が検証された。 さらに日本語でのいわゆる「ゼロ代名詞」の解釈過程についても、動的コンテクストとの観点から研究を行った。時制と代名詞は、言語理論的には、(広義の)「照応」現象として包摂される。その結果、述語の意味役割を道具立てとする従来の分析だけでは十分でなく、言語使用の背後に措定される語用論的主体(たとえば、「観察者」、「感覚主体」など)の重要性が確認された。したがって、日本語の談話解釈システムの構築においては、このような要因を当該コンテクストの規定のなかに統合することも必要になると考えられる。また、小学校の国語の教科書や幼児と母親との会話におけるゼロ代名詞の出現と先行詞との関係を分析し、談話解釈システムの基礎資料として整備した。
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Research Products
(7 results)