2005 Fiscal Year Annual Research Report
大規模分子動力学法で探るバイオナノマシンの作動原理
Project/Area Number |
15300103
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北尾 彰朗 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (30252422)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城地 保昌 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (30360415)
|
Keywords | 大規模分子動力学 / バイオナノマシン / 細菌べん毛 / サルモネラ菌 / べん毛繊維 / 超らせん構造 / 構造遷移 / 回転力 |
Research Abstract |
本研究では、回転方向の変化によって引き起される細菌べん毛繊維の変化を分子動力学計算によって再現し、らせん構造の転移機構を明らかにすることを目指している。特に今年度は、べん毛繊維のらせん構造転移の過程において、原子レベルでどのような立体構造変化が起こっているかを分子動力学で観察し、明らかにすることに主眼を置いた研究を行い、論文として研究結果を公表することができた(Kitao, et.al., Proc.Natl.Acad.Sci. 2006)。 この論文では、具体的には、大規模分子動力学シミュレーションによって様々な実験データを満足する原子レベルの超らせん構造を構築すると共に、構造多型の分子メカニズムを解明することに成功した。超らせん構造構築のメカニズムには以下の3種類の相互作用が鍵となることがわかった。パーマネント相互作用は様々な超らせん構造において常に保たれる。スライディング相互作用は可変な疎水性および親水性アミノ酸残基ペアの間で形成され、大きなエネルギー変化なしに蛋白質サブユニット間のずれを許容する。スイッチ相互作用の形成と解消はサブユニット間相互作用とサブユニット内相互作用をそれぞれ安定化する。我々は構造多型の原因は両者の相互作用のフラストレーションであると結論付けた。超らせん構造間の転移は「変形=>緩和」機構によって起こる。すなわち、繊維構造は幾何学的に急速に変形させられ、その後相互作用を再構成しながら徐々にエネルギー的準安定状態へ緩和することを明らかにした。 これらの大規模分子シミュレーション全般は、これまでに引き続き日本原子力研究開発機構のITBL並列計算機を主に利用することで可能となった。
|
Research Products
(6 results)