2003 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いた概日周期と睡眠類似行動の制御機構の分子生物学的解析
Project/Area Number |
15300108
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
粂 和彦 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (30251218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粂 昭苑 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (70347011)
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Keywords | ショウジョウバエ / 時間生物学 / 睡眠 / 不眠 / ドーパミン / 寿命 / 生物時計 / 概日周期 |
Research Abstract |
神経回路が単純で、概日周期の多くの変異が使用可能なショウジョウバエを用いて、概日周期と睡眠の解析を行った。睡眠の観察は、赤外線ビームによる行動解析装置を使用し、従来法よりサンプリング・レートを上げて時間分解能を向上させ、データを自動解析できるプログラムを自作した。また、睡眠をほとんど取らない常染色体劣性の変異株(不眠:fmn変異株)を発見し解析を進めてきたが、今年度は、その変異遺伝子を最終的に同定した。fmn変異株は、概日周期は正常で、睡眠時間が野生型の10%程度まで減少しているが、活動時間中の、単位時間当たりの活動度は野生型と差がない。しかし、活動時間が長いため、1日当たりの活動量は著明に増加している。さらに、fmn変異株は、野生型よりも寿命が短く、生存率の半減期が約3-4週間、短い。fmn変異を、交配による組み替えを用いて解析したところ、第2染色体上のコカイン感受性のドーパミン・トランスポーター遺伝子(dDAT)のごく近傍にマップされた。そこで、fmn変異株で、dDATの発現を調べると、野生型よりも短い3'側が欠失したmRNAが発現していた。ゲノムDNAとcDNAの配列を決定したところ、dDAT遺伝子の第6イントロンに、トランスポゾンの挿入があり、その部位にスプライシング異常があり、dDAT機能が失われていた。dDATのノックアウトマウスは、ドーパミン・シグナルの過剰によると考えられる活動性の亢進と、寿命の短縮が認められ、fmn変異株の表現形と類似している。これらの結果は、昆虫でも、哺乳類と同じく、覚醒・睡眠調節にドーパミンが使われていることを示し、遠く離れた2種類の動物で、覚醒・睡眠調節が、遺伝子・物質レベルで類似していることを示した。これまでも、行動学的な類似性は示されてきたが、遺伝子レベルでの相似性の証明は、今回の結果が、世界でも最初である。
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[Publications] Hendricks, J.C., Kume, K., Yin, J.-P., Sehgal, A.: "Gender Dimorphism in the Role of Cycle (Bmal1) in Rest, Rest Homeostasis, and Longevity in Drosophila melanogaster"J.Biol.Rhythm. 18. 12-25 (2003)
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[Publications] 粂 和彦: "時問の分子生物学〜時計と睡眠の遺伝子"講談社. 206 (2003)