2003 Fiscal Year Annual Research Report
成体由来幹細胞の樹立と自家および同種移植による脊髄の再生・機能再建
Project/Area Number |
15300114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井出 千束 京都大学, 医学研究科, 教授 (70010080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 直也 京都大学, 医学研究科, 助手 (50359808)
出澤 真理 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50272323)
鈴木 義久 京都大学, 医学研究科, 助教授 (30243025)
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Keywords | 神経幹細胞 / 骨髄間質細胞 / 脊髄損傷 / 髄液内移植 / 栄養因子 / 行動学的評価 / 組織的修復 / 細胞培養 |
Research Abstract |
幹細胞として神経幹細胞と骨髄間質細胞の2つを用いた. 1 神経幹細胞は成体の大脳側脳室外側壁の下にある脳室下組織由来の細胞を培養して、細胞塊(neurosphere)を形成させ、それを損傷脊髄に移植した.組織修復の効果が認められた。神経幹細胞が成体から採取でき、かつ移植後に該当する組織の細胞に分化することは再生には効果的であるが、反面、増殖し続けることと分化異常による癌化の危険性があり、臨床的な応用には大きな障害となる。さら同種移植が一般的で、自家移植の可能性はかなり低い。 2 一方、骨髄間質細胞は骨髄組織を培養して培養皿に接着して増殖する細胞で、幹細胞の性質を持ってはいるが、本研究では以下に述べるように、幹細胞として働いてはいないことが明となった。損傷脊髄のラットに骨髄間質細胞を損傷部に直接に移植するか、あるいは脳脊髄液経由で移植するか、いずれにおいても行動的な回復と組織学的な修復が見られた。神経幹細胞の移植の場合と大きく違う点は、移植した細胞が一定期間後には消失することである。つまり移植骨髄間質細胞は宿主内で分化することも増殖することもなく、結局死んでいくものと考えられる.効果がある理由として、移植骨髄間質細胞から分泌される何らかの栄養因子が効いていると考えられる。移植骨髄間質細胞の消失は臨床的には危険性がないことを示すものである。このような研究結果から臨床への応用のために関西医科大学救急部を通して倫理委員会に申請し、2003年12月10日に倫理委員会の承認を得た。現在、GMP基準の施設で細胞培養を行うべく準備を進めている。 3 骨髄間質細胞は自家移植が普通に出来、かつ癌化の心配のない細胞として注目されるが、今後は細胞培養の必要としない方法、つまり骨髄から採取した細胞から直ちに有効な細胞を分離して植えるという方法が可能になれば、その応用範囲はさらに広まる。現在この方向での研究を目指している。
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[Publications] Ohta M, Suzuki Y, Ide C., et al.: "Bone marrow stromal cells infused into the cerebrospinal fluid promote functional recovery of injured rat spinal cord with reduced cavity formatio"Experimental Neurology. (印刷中). (2004)
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[Publications] Xu, Y., Kimura, K., Matsumoto, N., Ide, C.: "Isolation of neural stem cells forebrain of deceased early postnatal and adult rats with protracted postmortem intervals"Journal of Neuroscience Research. 74. 533-540 (2003)
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[Publications] Wu, S., Suzuki, Y., Ide, C., et al.: "Bone marrow stromal cells enhance differentiation of co-cultured neurosphere cells and promote regeneration of injured spinal cord"Journal of Neuroscience Research. 72. 343-351 (2003)
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[Publications] Bai, H., Suzuki, Y., Ide, C., et al.: "Dissemination and proliferation of neural stem cells on the spinal cord by injection into the fourth ventricle of the rat"Journal of Neuroscience Method. 124. 181-187 (2003)
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[Publications] Matsumoto, N., Ide, C et al.: "Isolation of a set of genes expresssed in the choroid plexus of the mouse using suppression subtractive hybridization"Neuroscience. 117. 405-415 (2003)
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[Publications] Wu S, Suzuki Y, Ide C., et al.: "New method for transplantation of neurosphere cells into injured spinal cord through cerebrospinal fluid in rat"Neuroscience Letter. 318. 81-84 (2003)
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[Publications] 井出千束: "脳神経科学(タイトル:神経の再生)(伊藤正男 監修)"三輪書店. 11 (2003)