Research Abstract |
(1)本年度は,多くの企業で実施することができ,かつ従業員にも受け入れられる効果的・効率的な生活習慣病予防プログラムを開発・実施するために,まず下記の(1)(2)の調査を実施した。 (1)企業によるプログラムのAdoption(採用)及びImplementation(実施)を高めるための調査 生活習慣病予防プログラムに対する企業のニーズを調べるため,東京証券取引所一部・二部上場企業1,372社を調査対象として,新たに開発した調査票を用いて郵送による質間紙調査を行った。生活習慣病予防プログラムの現段階での実施率及び今後の実施予定はメンタルヘルス対策に比べると低く,企業に対する生活習慣病予防の重要性の啓発と企業にとって魅力的な生活習慣病予防プログラム開発の垂要性が示唆された。また,プログラム実施担当者として,社内の保健医療スタッフ以外に,社外資源に対するニーズの強いことが示された。 (2)従業員のReach(参加率)を高めるための調査 従業員の参加率が高いプログラムを開発するため,異なる業種6社の産業医・保健師を対象としたヒアリング調査を実施した。従来から指摘されている職種(現業,営業,事務)や勤務形態(日動,交替勤務)の違いを考慮することに加えて,近年における経済の停滞による企業・事業形態の変化(分社化,アウトソーシング),IT化の進展とそれに伴う勤務形態の多様化(派遣,裁量労働制,SOHO)を十分に考慮することが指摘された。また,プログラムとしては,講義形式よりも参加型のセミナーや実習・体験型のコースを設けることの重要性が指摘された。 (2)以上の結果をふまえて,2年目に実施予定の生活習慣病予防プログラムを開発した。効果的であるだけでなく,効率的なプログラムとするため,介入期間は重点的に指導する期間を3ヵ月とし,その後のフォローアップ期間を3ヵ月とした。また,指導内容は栄養面と身体活動面を中心としたが,指導担当者としてはプログラム普及段階での担当者確保と経費の面から,医師・管理栄養士・運動指導担当者の関与は少なくし,保健師を主体とした。プログラムは現業系,営業系,事務系の3つの職種別に作成したが,いずれもプロチャスカのステージ理論,グリーンのPRECEDEモデル,行動科学理論,社会的学習理論を取り入れて作成した。 (3)本研究で開発するプログラムは,保健師の資格を有するものであれば短時間の研修を受けることによって容易に用いることのできるプログラムであることを目指しているので,担当者用の指導マニュアルを作成した。マニュアルの作成に当たっては,プログラムの普遍性の確保と指導担当者の自主性尊重という相反する面のバランスを保つことに注意を払った。
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