2003 Fiscal Year Annual Research Report
農村家族の変容と中高年女性の情緒関係と老後意識の変化―23年間の追跡研究から―
Project/Area Number |
15300248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
佐藤 宏子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 教授 (60165818)
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Keywords | 農村家族 / 中高年女性 / 世代間関係 / 追跡研究 / 直系制家族 / 家族周期 / 農村女性 / 情緒関係 |
Research Abstract |
本研究は、農村直系制家族において伝統的に家族内地位がきわめて低く、経済力を持たなかった中高年女性が、どのように世代間関係や老後意識を変化させているかを時系列的に分析、考察することによって、直系制家族の内部構造における微視的変化の一側面を明らかにすることを目的としている。今年度は、1970年代以降の農村家族の変動に関する先行研究をレビューするとともに、本調査地域である静岡県志太郡岡部町朝比奈地域における1970年代後半以降の地域社会の社会経済的変化、農業の衰退による産業構造・就業構造の変化、世帯形態の変化、女性の就業状況の変化、世帯所得・家計収入の変化、消費行動・余暇生活におけるライフスタイルの変化を検討した。また、『国勢調査』『世界農林業センサス集落カード』などによって家族構造と農業経営の観点からわが国における本調査地域の位置づけを明確化した。さらに、1982年と1993年のパネル調査、1986年の三世代家族調査、1987年の三世代家族事例調査、1985年と1987年の四世代家族事例調査を分析、考察して中高年女性の世代間関係の変化を明らかにした。本年度の研究から主に次の点が明らかになった。(1)先行研究のレビューから、1970年代以降の農村家族の変動と農村女性に関する実証研究は直系家族制規範の根強い宮城県、山形県、秋田県などの稲作単作地帯の東北地方を中心に行われており、中部地方の茶栽培農家に着目した縦断的研究はみられないこと、農村家族の世代間関係研究において家族成員の「感情」の次元に言及する主観的家族関係や生活満足度を把握しようとする研究視角は認められないこと、農村地域における後継者不足、後継者の結婚難の深刻化、あとつぎの他出が引き起こしている直系制家族周期からの「逸脱」や「停滞」が、中高年女性の世代間関係をどのように変化させているかを実証的に明らかにした研究はみられないことが明らかになった。(2)朝比奈地域は、1960年代の高度経済成長期に茶栽培が目覚ましい発展を遂げ、日本を代表する茶どころとしての地位を確立した。茶生産の最盛期は1970年代であるが、1980年代中頃までは隆盛である。しかし、1990年代以降は茶生産は衰退の方向にあり、都市近郊農村としての様相を呈している。(3)1980年代には「運命共同体的世代間関係」が認められるが、専業農家における世代間での経営分離が家計や食事の分離、生活時間のずれを生じることによって世代間関係は変質しはじめ、既婚子夫婦が農外就労者となり中高年女性が家計を支えるのに伴って「相補的役割援助関係」へと移行している。以上の研究結果をまとめて、博士論文(お茶の水女子大学)として発表した。
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Research Products
(1 results)