Research Abstract |
本年度はまず,トカラ列島小宝島の完新世離水サンゴ礁で掘削調査を行った。小宝島は黒潮の流路近くに位置し,完新世サンゴ礁が島をとりまく北限であり,更新統琉球石灰岩の分布北限でもある。ここでは2段の完新世離水礁のうち,下位面海側(B1:掘削深5.08m),陸側(B2:掘削深10.0m)および上位面海側端部(B3:掘削深14.0m)および陸側部(B4:掘削深9.0m)の総延長38.08mのコアを得た。このうち上位面を掘削したB4にて掘削深7.8mで完新統の基盤に達した。本掘削結果より完新世サンゴ礁の層厚は最大14m以上に達することが明らかになり,種子島・屋久島地域のサンゴ礁と規模が異なる。現在,堆積相の詳細を解析するとともに,形成年代を測定中である。 また,種子島北東部の庄司浦にて,養殖場建設のため開削された水路の露頭調査を行い,北限礁の全構造を観察した。完新世サンゴ礁の層厚は2〜3mであり,ミドリイシを主とする原地性卓状サンゴ相の単一相であった。水中露頭より採取した試料の放射性炭素年代値より,庄司浦の現成サンゴ礁は約4,000cal yBP以降の2,000年間未満で形成されたことが明らかになり,馬毛島のサンゴ礁形成期と時相が異なる。 サンゴ礁の形成阻害要因といわれる冬季海水温の緯度的変化をサンゴ礁・群集周辺にて観測するため,高知県南西部(柏島後浜,岡崎の浜)のサンゴ群集周辺および,種子島北東部・北西部・馬毛島,トカラ刻島小宝島に自記録温度計を設置し,2005年11月に水温計測を開始した。また,紀伊半島においてもサンゴ群集の現状と分布について観察を行った。 次年度の掘削予定地である小笠原諸島にて,3年間にわたる現地及び関係機関への説明・交渉の末,2006年3月に掘削調査の前提となる地元同意を得た。
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