2003 Fiscal Year Annual Research Report
アジアモンスーンの急激な変動伴う日本海海洋環境変動の高時間解像度復元
Project/Area Number |
15310008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 隆治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30143366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 祐典 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (10359648)
山本 正伸 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (60332475)
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Keywords | モンスーン / 日本海 / 後氷期 / 14C年代 / 風成塵 / アルケノン |
Research Abstract |
本研究は、日本海から採取された4本のコアを用いて、最終氷期極相期から後氷期にかけての日本海海洋環境を高時間解像度で復元するとともに、モンスーン強度変動指標を取り出して比較する事により、アジアモンスーンの変動に応答して日本海の表層水、深層水環境がどのように変化したかを立体的に明らかにする事を目的とする。初年度は、隠岐堆より採取されたDGC-6コア(2.5m)について、先ず14層準でAMS法による14C年代の測定、2層準でテフラの同定を行なった。その結果、本コアは過去約3万年間を連続的にカバーしている事がわかった。次に、本コアについて1.25cm間隔で明るさと色調、主要元素濃度、含水率、砕屑物粒度の測定を、5〜25cm間隔でアルケノン水温の推定を行なった。その結果、11.5〜7千年前にかけては堆積物の色は濃く、有機物含有量が高い事が判った。また、この時期は20〜24度と高いアルケノン水温を示した。これらは、夏季モンスーンの強化とそれに伴う揚子江流出量の増大、東シナ海沿岸水の日本海への流入強化を反映している可能性が高い。また、10〜7千年前にかけては、砕屑物粒度も増大していた。次に、後氷期の記録を詳しく見ると、1.3〜2.4千年の間隔で6回(0.4,1.9,4.7,7.1,9.1,11.5ka)堆積物の色が濃くなる時期があり、それは有機物含有量が高まった事を反映すると考えられる。これらの層準はまた、FeやKなど砕屑性元素濃度が高く、含水率が低く、砕屑物粒度が粗くなる層準に対応する傾向があり、風成あるいは河川起源の砕屑物流入量が増加して、珪藻や有孔虫などの生物源粒子の含有量が減少した事を示唆する。これは、数千年スケールでのモンスーン変動を反映している可能性がある。そして、そのタイミングは、北大西洋の氷山起源礫の堆積量が減少した時期に良く対応している。この対応が正しければ、後氷期にも、東アジアにおける数千年スケールでのモンスーン変動が、北大西洋域の気候変動とリンクしていた事になる。
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