Research Abstract |
本研究では,グローバル化するIT(情報)技術と環境問題について,e-waste問題を中心に検討した.e-wasteとは,家電,コンピュータ,携帯電話など電子・電機製品の廃棄物の総称である.組み立てられた電子・電機製品を念頭に使用されている場合が多いが,蛍光灯や乾電池,柱上変圧器,さらにはIC基板など部品,電子・電機製品を生産する際に発生する不良品などを含む場合もあり,必ずしも定義ははっきりしていない.アジア地域でも,日本や韓国,台湾などで,e-wasteのリサイクルに関する法制化が行われている.また,法制化が進んでいない地域でも,企業が自主的な回収リサイクル・プログラムに取り組むなどの努力を始めている.環境汚染を引き起こしながらリサイクルが行われている事例がアジア地域でもいくつか報告されており,適切な管理が求められている.本研究では,アジア地域のe-waste処理の状況を概観し,今後の方向性を検討した. 製造業者の自主的なe-wasteの回収リサイクルへの取組では,国際的に廃家電を貿易する事例がすくなくない.適切な処理業者が回収した地域に存在しているとは限らないからである.また,解体後に発生する再生資源についても,国際的に貿易されている.日本のテレビのリサイクルでは,洗浄済みのガラスカレットの輸出が必要となってきている.ブラウン管およびブラウン管ガラスの製造工場のアジア地域への移転が進んできており,日本国内で鉛を含有したブラウン管ガラスの再生利用先が限られてきているためである.2004年5月に日本政府は,洗浄済みガラスカレットをバーゼル条約の対象外と見なす方針をかため,日系のブラウン管ガラス工場が立地しているタイおよびマレーシアでも洗浄済みのブラウン管カレットをバーゼル対象外とするように,タイおよびマレーシアと交渉を行ってきた.「汚染性」に関する受け入れ国の関連省庁の懸念を払拭するための交渉に時間を要したが,バーゼル条約対象外として洗浄済みのカレットの輸出が認められる方向となり,2005年5月にタイに,2005年10月からはマレーシア向けの輸出が始まってきている.
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