Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西條 辰義 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (20205628)
武藤 滋夫 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 教授 (50126330)
蟹江 憲史 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 助教授 (90326463)
中丸 麻由子 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 講師 (70324332)
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Research Abstract |
我々が早急な対策を迫られている重要な問題の一つである地球温暖化問題に関して,温室効果ガスを削減し,地球温暖化問題の解決に役立つ制度をどのように設計すべきかについて,ミクロ経済理論,ゲーム理論,実験経済学,国際関係論,社会シミュレーション解析などのさまざまな手法を用いて吟味した. 京都議定書に規定されている目標を達成するためには,国内における排出権取引制度の整備が急務である.日本が化石燃料の多くを輸入に頼っているという事実を考慮に入れた場合には,上流比例還元型排出権取引制度が有効であることを,経済理論と実験経済学の手法を用いて示した.上流還元型の排出権取引は,議定書の順守が可能になる,環境保全に資する,制度執行費用が非常に小さい,最上流主体に排出上限を課さない,すべての主体が参加可能,経済効率的であるなど,さまざまな優位な点を持つ制度である. また,気候変動対策中長期的目標をめぐる論点や諸課題を明らかにし,これに関する国際的な論議の動向を概観し,日本がとりうる目標について吟味した.高い確率で気温上昇を産業革命以前比2℃以内に抑えるためには,2050年の日本のGHG排出削減目標値は少なくとも90年比60〜80%に設定する必要がある.国レベルの目標設定が欧州を中心に活発となる一方,中長期目標設定に関しては多くの科学的・政策的・政治的不確実性があることから,国際的な目標設定には懐疑論もあるが,行動指標としての国際的中長期目標設定の意義が重要である. さらに,温室効果ガスの削減などの公共財供給のための制度設計における基礎的な研究を行い,制度の参加者にインセンティブを持たせつつ,効率的な供給をどのように行うかという問題を吟味した.他人がどのような行動を採ろうとも,自分はウソをつかず正直に行動するのが一番であるような戦略的操作不能と呼ばれる制度の設計について,ゲーム理論と実験経済学の手法を用いて考察した.
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