2004 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による爪痕を契機とするゲノム不安定化機構の染色体移入法による解析
Project/Area Number |
15310040
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 大阪府立大学, 先端科学研究所, 教授 (00195744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 一乗 大阪府立大学, 先端科学研究所, 助手 (40347513)
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Keywords | ゲノム不安定化 / 発がん / 放射線 / 染色体移入 / 染色体異常 / テロメア |
Research Abstract |
ゲノム不安定化は、発がんの原因、及びその進展の原動力として重要な現象である。本研究では、放射線によるゲノム不安定化誘導メカニズムを探るために世界で初めて染色体移入法を用いた。まず、ヒト染色体(4番、または11番)を1本含むマウスA9細胞にX線(4Gy、6Gy、15Gy)を照射し、被曝したヒト染色体だけを別の被曝していないマウスm5S細胞に移入し、被曝ヒト染色体の安定性を蛍光着色法(FISH法)によって解析した。その結果、被曝していないヒト染色体はマウス細胞中で安定であり、7種の染色体移入細胞を調べて染色体異常を持つ細胞の割合は0%〜7.5%を示し、異常のタイプも2種類以下であった。これに対して、被曝ヒト染色体は、被曝していないマウス細胞中でも不安定化する頻度が高く、9種の染色体移入細胞のうち2種において、染色体異常を持つ細胞の割合は72%、及び85%の高率を示し、異常のタイプもそれぞれ7種類、及び8種類と多いことが分かった。一方、被曝した(4Gy)染色体受容マウス細胞に、被曝していないヒト染色体を移入した場合についても解析した。その結果、移入されたヒト染色体は、被曝したマウス染色体と相互作用して不安定化し、6種の染色体移入細胞のうち2種において、染色体異常を持つ細胞の割合は43%、及び80%を示し、異常のタイプはそれぞれ6種類、及び4種類であった。本研究の結果は、被曝染色体自身に不安定化の原因が内在すること、さらにその原因は放射線の間接影響として被曝子孫細胞に伝搬される性質のものであることを示唆している。また、異常を示した染色体のテロメアをFISH法で解析した結果、染色体不安定化にはテロメア機能の不全が関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(12 results)