2005 Fiscal Year Annual Research Report
スピン偏極トンネル分光法によるナノ磁気構造と表面電子状態の探索
Project/Area Number |
15310075
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Research Institution | Osaka-Kyoiku University |
Principal Investigator |
川越 毅 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (20346224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壬生 攻 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40222327)
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Keywords | スピン偏極トンネル分光法 / スピン偏極表面準位 / 層状反強磁性 / らせんテラス / マイクロマグネティクシミュレーション |
Research Abstract |
最終年度に当たる本年度得られた大きな研究成果は「Cr(001)薄膜(9nm)の高密度なナノスケールのらせん状テラスの成長とスピン偏極トンネル分光法によるその磁気像の観察」である。Au(001)上のCr(001)薄膜において成長方法を探索した結果、原子レベルで平坦ならせん状テラス(平均直径50nm,平均ステップ数4)が高密度に自己形成させることに成功した。ステップは、らせんの中心にあるらせん転位から発生しており、単原子ステップである。結晶成長に伴うらせんテラスはこれまで多く観測されているが、らせん構造が層状反強磁性に与える影響を初めて観察した。形状像と同時に同じ場所で観察した磁気像には明瞭なコントラストが観察された。観測された磁気コントラストの特徴は、(1)1原子層異なるごとにコントラストが反転する層状反強磁性(2)隣接する2つのらせん間でらせん構造に伴うスピンフラストレーションの両者が観測された。 観測された磁気像から詳細な磁気構造を調べた結果、らせん構造に伴うスピンフラストレーションによって試料面内でスピンが回転していることが分かった。しかし強磁性体ドットの磁気渦構造とは異なり、隣接するらせんの中心を結ぶ線に対して非対称な磁気構造が観測されている点が特徴である。観測された非対称な磁気構造の起源を確認するため、らせん構造に特有な幾何学的な非対称性を正確に取り入れたマイクロマグネティクシミュレーションを行った結果、両者はよく対応しており、ナノスケールのらせん構造によって層状反強磁性がかなりの影響を受けることが分かった。現在、ナノ構造と磁性との競合を一般的に理解することは、基礎・応用の両面で重要な課題の1つであり、本手法がその現象解明にきわめて有力な手法であることを示した。
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Research Products
(2 results)