2003 Fiscal Year Annual Research Report
走査型アトムプローブによる高機能電子材料の原子レベルの解析
Project/Area Number |
15310077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷口 昌宏 金沢工業大学, 工学部, 助教授 (30250418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (10108235)
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Keywords | 走査型アトムプローブ / 機能性電子材料 / 炭素材料 / ダイヤモンド / シリコン / 水素濃度 / ポリチオフェン / 酸化チタン |
Research Abstract |
走査型アトムプローブ(SAP)の特性を生かして以下の研究成果を挙げた。 1.炭素材料やシリコンに含まれる水素量の計測:水素の定量測定は容易ではない。しかし、SAPでは、試料表面に含まれる全ての原子を陽イオンとして電界蒸発させ、それらを逐一検出同定しているので水素量を極めて高い確度で測定できる特性がある。CVD法や高温高圧法で作製されたダイヤモンド、高純度グラファイト、カーボンナノチューブ、シリコンウエーハー等を分析し、大量の水素が含まれている事を明らかにした。最も多く水素を含んでいるのはCVDダイヤモンドであって、水素原子と炭素原子の比H/Cは1.28であって、水素原子の方が炭素原子より多い。一番少ないのはガラス状炭素であって、0.25である。シリコンに含まれる水素量は深さとともに減少するが、表面処理法によっても変わる。HF処理したシリコンでは、清浄な領域では表面原子数の35%であり、NH_4Fでは28%である。しかし、表面処理により汚染された領域では、水素濃度は高く、それぞれ53%と60%であり、深い領域まで分布している。また、炭素やシリコン原子に結合している水素の結合には強弱二つの結合状態がある事も明らかにした。 2.ポリチオフェンの電子状態と原子間の結合状態:シリコンと電導性透明薄膜上に形成されたポリチオフェン薄膜の電子状態を電界放射電流の印加電圧による変化より評価した。温度による電流量の変化はポリチオフェンが半導体であり、仕事関数はシリコンとほぼ等しい事が明らかにした。また、ポリチオフェンを構成する硫黄原子は単体として電界蒸発せず、炭素とともに、特にSC_4H^<2+>として検出された。この事は、ポリチオフェンの基本構造であるSC_4Hが極めて安定である事を示している。しかし、膜内にはチオフェンの重合が不十分な領域があり、炭素のみが検出される事も明らかにした。 3.酸化チタン内の酸素分布:タングステン下地上の酸化チタンを分析した。電界放射特性は酸化チタンの仕事関数はチタンとほぼ同等であり、タングステンより小さい事を明らかにした。しかし、酸化チタンの表面層を電界蒸発すると、仕事関数がタングステンより大きくなった。予想外の結果は、酸化チタン内の酸素濃度がTiO_2より低く、多くの酸素原子が下地のタングステンと結合している事である。酸素濃度と光触媒としての機能との関連性の解明は今後の課題である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] O.Nishikawa, T.Murakami, M.Watanabe, M.Taniguchi, T.Kuzumaki, S.Kondo: "Atomic Level Analysis of Carbon and Silicon by a Scanning Atom Probe"Jpn.J.Appl.Physs.. 42. 4816-4824 (2003)
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[Publications] O.Nishikawa, M.Watanabe, T.Murakami, T.Yagyu, M.Taniguchi: "Atomic Level Analysis of Carbon Materials with the Scanning Atom Probe"New Diamond and Frontier Carbon Technology. 13. 257-273 (2003)