2005 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスを用いた神経極性形成分子群の同定と細胞内ネットワーク解析
Project/Area Number |
15310140
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 直之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (20223216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 広 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183005)
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Keywords | 神経細胞 / 軸索 / 樹状突起 / 細胞極性 / 成長円錐 / プロテオーム / Shootin / Singar |
Research Abstract |
神経細胞は、1本の軸索と複数の樹状突起を有し神経極性を形成する。本研究は、プロテオミクスを用いて神経細胞の極性や軸索形成に関わる分子群を網羅的に同定し機能解析を行うことにより、神経極性形成・維持の分子ネットワークを明らかとすることを目的としている。 これまでの研究で、我々は82個の神経軸索に濃縮するタンパク質を同定している。本年度は、さらにタンパク質の同定を進めて、軸索に濃縮するタンパク質10個の同定に成功した。これらのうち、2つの新規タンパク質Shootin1とSingarに関しては、重点的な機能解析を行った。Shootin1に関しては、RNAiによる発現抑制により、神経細胞の極性形成の遅延が引き起こされることを見出した。以上の結果からShootin1が神経極性形成の初期の段階において重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、EGFP融合タンパク質を作成してShootin1の挙動をリアルタイムで観察したところ、Shootin1が神経軸索の先端部の成長円錐でダイナミックに移動することがわかった。 また、Singarは極性形成に伴って発現量が上昇するが軸索にも樹状突起にも局在した。SingarをRNAiで発現抑制すると過剰な軸索が形成された。さらにこの分子はShootin1の過剰発現による過剰軸索の形成を抑制した。従ってSingarが正常な極性形成過程において過剰な軸索の形成を抑制する可能性が示唆された。さらに、Singarの発現抑制により軸索形成作用が認められたことから、Singarの発現を調節することにより神経軸索再生医療に利用できる可能性が示唆された。 本研究で、神経極性形成に重要な役割を果たすと考えられるShootin1とSingarという新しいタンパク質を発見することができたのは、予想以上の成果と考えている。今後は再生医療への応用も含めて更なる解析を進めたい。
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