2005 Fiscal Year Annual Research Report
ネイションとステートの形成プロセスにおけるウクライナ・アイデンティティーの確立
Project/Area Number |
15310170
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Research Institution | Heisei International University |
Principal Investigator |
末澤 恵美 平成国際大学, 法学部, 助教授 (20348329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 英彦 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (60092459)
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Keywords | ウクライナ化 / オレンジ改革 / ロシア語 / 標準ウクライナ語 / コサック / ポーランド人追放 / ウクライナ民族主義 / 民主化 |
Research Abstract |
ソ連崩壊を決定付けたウクライナの独立はどの様な背景と意味をもち、20世紀に誕生したこの欧州の大国はどの様に国家建設を進め、全く異なる体制への転換はどの様な国家モデルを提示するのかといった点は、旧ソ連研究者のみならず世界的な関心の的であり、これらを解明するには、制度・機構構築(ステート)の側面と、共同体としての意識創出・アイデンティティの形成(ネイション)の両面から分析する必要がある。しかしながら、過去の先行研究は偏りが多く、総合的な視野にたった研究が欠如していた。その様な認識の下で始められた本プロジェクトは、歴史・言語・政治・経済・外交など幅広く専門家を集め、現地調査(インタビュー、アンケート、資料収集)、研究会、学会報告等によって学際的な研究を進め成果をおさめてきた。最終年度である平成17年度は、研究会合を6回開き、それぞれの現地調査・研究報告と情報交換、成果報告書の内容や本プロジェクトが今後なしうる貢献の形等について議論を深めた。 ウクライナでは、2004年暮にいわゆる「オレンジ革命」が起こり、民主化の行方を問う独立後最大の節目をむかえた。しかしながら「革命」後も政権の安定は続かず、旧勢力が再び台頭する中、2006年3月に議会選が行なわれた。研究代表者の末澤は、国家建設と民主化は不可分の関係にあるとの観点から、2004年の大統領選に引き続き選挙監視員として現地を調査し、他の研究分担者・協力者も、「革命」の過程で露呈された東西分断と国民統合の問題を、言語使用状況や歴史的背景、周辺地域との関係等と絡めて考察した。研究分担者の中澤は、ウクライナ語優勢地域と見られる西部の聞き取り調査を実施し、むしろロシア化が進んでいる現象を指摘、ロシア語の第二公用語化をめぐる議論だけでなく、言語使用状況の重要な指標となる通俗的な小説の言語別販売状況についても調査した。研究協力者である柳澤は、戦間期西ウクライナで展開されたポーランド人追放政策による「ウクライナ化」の影響を中心に図書館の貴重な資料をつぶさに調査した。小川は、出生地や職業、性別、年齢による言語状況の違いをアンケート調査、光吉はウクライナの民族主義と女性史及びソヴィエト政権の母子政策の関係といった視点から、国内外の学会で精力的に研究発表した。また、キエフ留学を終えて帰国した栗原は、中世コサック社会がウクライナ国家へ発展していく過程と、ウクライナ人のアイデンティティ形成への影響を分析した。
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Research Products
(3 results)