2003 Fiscal Year Annual Research Report
生成文法に基づいた言語の脳科学-失語症,ERP,MEGによる統合的研究-
Project/Area Number |
15320053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
萩原 裕子 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (20172835)
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Keywords | 事象関連電位(ERP) / 統語処理 / Scrambling / 右方転位 / LAN / P600 / 項と付加詞 |
Research Abstract |
転移現象の脳内基盤を探るべく,128チャンネル脳波装置を用いて3つの事象関連電位実験(左方転位かき混ぜ文,右方転位文,三項動詞文)を行った。1.左方転位のかき混ぜ文では,欧米言語のWH移動にみられるフィラーギャップ依存関係に伴って生じる句を超えた持続性のLAN(ワーキングメモリの反映)は認められなかった。代わりに移動に伴う成分として,文頭の目的語名詞句の処理では統語逸脱を反映するLANが左前頭部に出現した。また文末動詞にて移動操作を反映すると思われる陰性波が,前頭〜中心部に出現した。これより左方転位文については,NP移動とWH移動とは異なった脳内処理基盤をもつ可能性が示唆された。2.右方転位文では,名詞句の転位と付加詞の転位を比較したところ,両者ともに陽性成分(P600)が認められた。しかしその頭皮上分布が異なり,項の処理では左半球が,付加詞の処理では右半球に大きな活動が認められた。これより,項と付加詞の処理では脳内基盤が異なることが示唆された。さらに,1と2より,左方と右方では異なる脳波成分が検出されたことにより,転位する方向性の違いで処理形式が異なることが示唆された。3.動詞句内での直接目的語の転位をみた3項動詞文(予備実験)では,転位文の動詞にて,早期と後期の陽性成分が検出された。後期陽性成分はフィラーをギャップに統合する処理が反映されているものと推察された。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] Hagiwara, H., Soshi, T., Ishihara, M., Imanaka, K.: "Processing of Japanese scrambling : A neurophysiological study of ERP correlates related to aspects of filler-gap dependencies"Metropolitan Linguistics (Tokyo Metropolitan University). 23. (2003)
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[Publications] Soshi, T., Hagiwara, H., Koso, A.: "Processing of right dislocation sentences : A multichannel ERP study"Metropolitan Linguistics (Tokyo Metropolitan University). 23. (2003)
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[Publications] 曽雌崇弘, 萩原裕子, 高祖歩美: "項と付加詞の処理に関する多チャンネル脳波研究"電子情報通信学会技術研究報告(信学技報). 103・659. 25-30 (2004)
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[Publications] 萩原裕子, 曽雌崇弘: "かき混ぜ文の処理について-多チャンネル脳波による検討-"意図の伝達スキルに関する国際シンポジウム開催準備研究公開シンポジウム論文集. 35-44 (2003)
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[Publications] 萩原裕子: "文法の脳内メカニズムと第二言語習得-句構造規則の学習を中心に-"神経研究の進歩. 47・5. 708-715 (2003)
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[Publications] 萩原裕子: "文処理の脳内メカニズム"Clinical Neuroscience. 21・7. 783-786 (2003)
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[Publications] 萩原裕子, 有路憲一: "事象関連電位研究への言語学・言語心理学的アプローチ(1)"臨床脳波. 45・5. 673-684 (2003)
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[Publications] 萩原裕子, 有路憲一: "事象関連電位研究への言語学・言語心理学的アプローチ(2)"臨床脳波. 45・6. 731-742 (2003)
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[Publications] 萩原裕子, 有路憲一: "事象関連電位研究への言語学・言語心理学的アプローチ(3)"臨床脳波. 45・7. 801-814 (2003)
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[Publications] 萩原裕子: "失文法における機能範疇の喪失 -比較言語学的考察-"市河賞36年の軌跡(開拓社). 219-231 (2003)