2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15320121
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40211718)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 純一 高知大学, 医学部, 教授 (70295377)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
慶田 勝彦 熊本大学, 文学部, 教授 (10195620)
奥野 克巳 桜美林大学, 国際学部, 助教授 (50311246)
|
Keywords | 文化人類学 / 社会学 / 医療・福祉 / 社会医学 |
Research Abstract |
本年度は次の2つの点に関する具体的諸相が明らかになった。 1.我が国がアジア諸国の中でいち早く西洋列強の植民地支配から自由になりつつ、西洋医学システムの導入を図り、伝染病対策ならびに壮丁の健康問題に起源をもつ、「国民の健康」管理システムを早期に確立した。他方、東南アジア諸国は、植民地統治の一環として植民地医療システムが導入されることが両者の根本的な違いになり、これが今日における「国民の健康」管理システムの質的差異を形成する原因になった。その政治状況に加え19世紀末に大流行するコレラをはじめとする伝染病と伝染病対策のグローバル化により、各国および各植民地の疾病管理のシステムの歴史に大きな刻印を残した(疾病流行による社会変化)。20世紀末から現在につづく多国籍バイオプロスペクターおよび新興感染症に対する世界保健機関による国際政治介入の隆盛などは、およそ百年前の先駆的な国際状況と極めて類似していることが判明した(社会変容システムにおける類似性)。 2.ポスト福祉国家論によると、医療は国家にとっての不可欠な統治課題であったが、次第に国家の役割が縮小化し医療や福祉は国家運営や国民統治にとって「不要な荷物」として見なされてくる転換過程をとる。このような政治思想の潮流の変化の中で今日の近代医療の研究枠組みもまた措定されている。臨床医学研究を席巻したEBM(根拠に基づく医療)や公衆衛生や疫学研究の「健康転換」などの理論は、グローバルな健康政治学(global heath politics)の言語という観点から分析できることがいくつかの事例検討を通して明らかになった。
|
Research Products
(14 results)