2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15320121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40211718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 純一 高知大学, 医学部, 教授 (70295377)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
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Keywords | 文化人類学 / 社会学 / 医療思想史 / 社会医学 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
情報と経済のグローバリゼーションがその地球上の市民にもたらす社会的インパクトのひとつとして、人間生活の「価値の多元化状況」が生起したことを指摘することができる。そのことを踏まえて本研究では、医療と福祉に焦点をあて文化人類学・社会学・医療思想史的な分析を加え、以下の3つの諸相を明らかにした。 1.18,19世紀以降、西欧社会において中心的なテーマになる医療政策を通して社会の統治に与するという発想は、それ以前の医療中心的な志向から脱却し、経済・政治システムと調和をとりながら、テクノクラシー的管理を徹底化させることで、その実体論的意義を獲得した。第二次大戦後の国際連合の専門機関である世界保健機関の創設と今日にまでいたる保健政策におけるテクノクラシーの存続はその証左であるといえる。 2.今日のグローバリゼーション状況は1960年代の新興独立国の誕生前と、それ以降のポスト植民地時代という二区分に分けることができる。これにより全地球的な国民国家統治システムが作動するようになる。冷戦構造の崩壊は、こと医療・福祉の問題系においては、国家のこの領域に対する積極的な関与を断念させ、新しいレッセフェール主義ともいえる政策状況への突入を可能にした。ただし、このことの是非をめぐっての議論は現在継続中であり、決定的な新たな代替案というものも登場していない。 3.上記2つのダイナミックな過程を分析する手法として、従来の歴史学的アプローチとは異なり、「社会問題」としてフレーム化し個々の医療・福祉政策への反映ならびに世論への介入を通して、社会問題の解決という一種のゲームに参与する医療・福祉専門職集団というエージェントとして捉え分析することの重要性についての理論的成果を得ることができた。
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Research Products
(6 results)