2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15330002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 達夫 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (30114383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 正樹 東北芸術工科大学, 一般教養, 教授 (20147490)
桂木 隆夫 学習院大学, 法学部, 教授 (70138535)
石山 文彦 大東文化大学, 法学部, 教授 (80221761)
大江 洋 北海道教育大学, 教育学部・函館校, 教授 (80308098)
瀧川 裕英 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (50251434)
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Keywords | 公共性 / 市場 / 文化 / 教育 / 自己決定 / 責任 / 環境 / 正義 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、種々の公共性論を領域的公共性論・主体的公共性論・手続的公共性論・理由志向的公共性論に類型的にモデル化した上で、多元的社会の正統性危機に答えうるか否かという観点から、これらを、多文化主義の葛藤・ボーダーレス化した市場経済・環境と開発の相克・教育の崩壊・死の自己決定をめぐる対立などの具体的問題に即して比較査定し、従来の領域的公私二元論は維持しがたく理由志向的公共性論によって批判的に組み替えられる必要があること、主体的公共性論・手続的公共性論も理由志向的公共性論による補正・補強が必要であること、さらに、公共的理由自体の多元的分裂を視野において「一階の公共性」と「二階の公共性」を区別するとともに、それに相関させて「法における公共性」と「法の公共性」とを区別することが、多元的社会の正統性危機に応答しうるような公共性概念と法概念の的確な接合のための条件であることを確認した。 これを踏まえて法概念論における問題理解の枠組み自体の再編と思考資源の転換・再開発の作業を、遵法義務・革命的法創造・法の限界等に則して進めた。この過程で、近年台頭している規範的法実証主義の問題提起の重要性が明らかになり、この立場への賛否はともかく、それが指摘している立法過程自体の法哲学的・法理論的考察の欠落は、多元的社会における法の公共的正統性問題を解く上で真剣に受けとめるべき問題であり、今後取り組むべき課題であることが確認された。 なお、この共同研究の成果については、平成17年5月スペインのグラナダで開催されたIVR(国際法哲学・社会哲学学会連合)世界大会において、井上・瀧川がそれぞれ論文の形で報告し、井上報告は本実績報告書の研究発表欄に示した英文共著で公刊された。さらに、研究代表者・研究分担者と研究協力者の寄稿をまとめて共著(井上達夫編『公共性の法哲学』)として刊行する準備を現在進めており、近く出版される予定である。
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Research Products
(6 results)