2003 Fiscal Year Annual Research Report
弁護士過疎地における法的サービス供給の構造―事例調査と大量調査を通じて―
Project/Area Number |
15330004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樫村 志郎 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40114433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 昌樹 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10244625)
菅原 郁夫 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90162859)
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Keywords | 紛争処理 / 司法過疎 / 弁護士 / 司法書士 / 法律相談 / 公設弁護士事務所 / 法律サービス / 警察相談 |
Research Abstract |
平成15年度には、(1)石見(7月16日〜7月18日)、(2)峰山・宮津(7月23日〜7月25日)、(3)宮古(8月5日〜8日)、(4)石垣(8月19日〜22日)の4地区を訪問し、裁判所、市役所、警察、県民生活センター、司法書士、弁護士等への聞き取り調査を行った。その結果、次のような暫定的知見を得た。 (1)過疎地で発生している(潜在的な)法律問題には、その地域の住民間のもの(近隣紛争や家族間のトラブル等)と、地域外の相手とのもの(悪徳商法、クレサラ、架空請求等)とに分けられる。前者と後者とでは、典型的な紛争処理行動のパターンが異なっているように思われる。 (2)伝統的な紛争処理の仕組み(親戚間の相互扶助等)は、それが今日でもある程度機能している地域と、そうでない地域とがある。 (3)クレサラ事件は、過疎地においてもかなり深刻な問題となっている。所得が低いために、比較的少額の債務でも深刻な問題となる可能性が高い。 (4)弁護士が不在の地域にも、その地域なりの苦情処理の仕組みが存在している。市役所、社会福祉協議会、警察、駐在所等が、その仕組みの中心となっている。 (5)近年、各地の警察署が、自らが中心となり、その地域の各地の苦情処理機関をネットワーク化する試みを展開している。この警察中心型苦情処理ネットワークの構築は、過疎地においては、苦情処理サービスの統合・円滑化という観点からは意義のある取り組みである。 (6)公設弁護事務所の開設は、裁判利用を増加させると考えられる。すなわち、弁護士の存在は、それまで潜在化していた法的サービスへの需要を顕在化させる効果があると考えられる。 (7)過疎地にも、そこで弁護士が開業し、業務を継続していけるだけの(潜在的な)法的ニーズはあるように思われる。 (8)公設弁護事務所や法律相談センターの開設は、それ以前にその地域に存在していた苦情処理機関のネットワークに変化をもたらす。公設弁護事務所や法律相談センターが苦情処理機関のネットワークに組み込まれることにより、他の苦情処理機関の相談者への対応のパターン、機関相互間の連携パターン、最終的な苦情処理のパターン等に変化が生じる。
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