2006 Fiscal Year Annual Research Report
消費に基づく資産価格モデル(C-CAPM)を巡る理論的・実証的諸問題の検討
Project/Area Number |
15330063
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Research Institution | KEIO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
牧 厚志 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20051906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 賢治 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 助教授 (30317325)
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Keywords | リスクプレミアムパズル / C-CAPM / 家計消費データ / 相対的危険回避度 / 季節調整 / 操作変数 / オイラー方程式 / 品目別危険回避度 |
Research Abstract |
危険資産と安全資産の収益率の差の期待値について、理論値と実現値の間にギャップがあるという問題があり、これを[リスクプレミアムパズル]という。リスププレミアムパズルに大きく影響するパラメーターが相対的危険回避度の係数である。 アメリカの研究においては、この危険回避度の係数が大きく、また上記の理論モデルも棄却されるのでリスクプレミアムパズルがあるとされてきた。一方で、日本の研究においては、このモデルの一つの具体化である、危険資産と安全資産の差ではなく、危険資産と安全資産それぞれを変数としたオイラー方程式の推定において、この係数が低いことをもって上記パズルがないと主張するものもある。 この共同研究では日本のマクロとミクロの消費データと資産収益率の関係の考察を行った。具体的にはNIPAと家計調査の消費データとIbbotson Associates Japanの株、債券、安全資産の総収益率との間の関係を消費に基づく資産価格モデルという理論モデルの観点から実証的に考察した。 共同研究では、3つの観点からこのパズルに関する考察を行った。まず一つ目は、既存研究ではほとんど注意の払われてこなかった消費系列の季節調整の観点である。季節調整の仕方によって消費系列の統計性質が変化するが、この変化が係数の推定値とモデルの妥当性にいかなる影響をあたえるか考察した。次に2つめは、操作変数の観点である。既存の研究では、操作変数が恣意的に選ばれていたが、操作変数の選択は係数の推定値とモデルの妥当性に影響を与える。この影響を考察するため、1000以上の操作変数の組について推定および検定を行い、操作変数の影響を考察した。最後に3つめは、多品目の消費系列の考察である。既存研究では、消費品目は非耐久財とサービスの合計であった。この研究では、品目別に危険回避度が異なるのではないかという仮説のもとに、品目を細分化して研究を行った。 季節調整の有無及び方法によってモデルの説明力に変化が生じたため、季節調整についてさらなる考察が必要なことが判明した。次に2%-10%のケースでのみベータの値とガンマの値とJテストの値が妥当であった。さらにこれらの妥当なケースにおいてもガンマの値は1の近傍ではなく、ゼロにちかく、かつベータのt値は非常におおきかった。つまり、消費の項は1となる。これはオイラー方程式において消費成長率の項が1で単にベータと安全資産収益率の積が1という式を推定しているにすぎない。最後に品目別に危険回避度は大きく異なることが判明した。
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