2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会的認知の文化的共有性-コミュニケーション分析に基づく実験社会心理学的検討
Project/Area Number |
15330134
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 神戸大学, 文学部, 助教授 (90261031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米谷 淳 神戸大学, 大学教育推進機構, 教授 (70157121)
遠藤 由美 関西大学, 社会学部, 教授 (80213601)
松井 智子 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (20296792)
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Keywords | 文化と認知 / 共有的認知 / 原因推論 / 意図性の認知 / コミュニケーション / 感情の認知 / 心の理論 |
Research Abstract |
行為の原因に関する推論が、情報の伝達を経てどのように共有されるのかを調べるための実験を行なった。事件を起こした人物のプロフィール文に含まれる情報のうち、内的原因と外的原因に関する情報が、どのように変容されて他者に伝達されるかを調べた。結果は、原因について行われる推論内容と、他者に伝達する原因情報の内容とは独立であることを示唆した。また、日本とオーストラリアで収集したデータの比較からは、これまでのところ相異点よりも共通点の方が多く見出されている。 次に、個人の行為だけでなく集団の行為に対して行なわれる原因推論と、行為の背後に知覚される意図性の判断を調べる実験を行なった。結果は、集団としてのまとまりが高く知覚されると、個人の行為の場合と同様に、何らかの意図をもって行為がなされたと判断されること、そしてそれに対する責任も問われることが示された。従来の原因帰属過程の研究に加えて、意図性知覚を理解するための理論的枠組みの必要性が明らかとなった。加えて、集団の行為に関する認知の基礎となる、本質性認知の構造とその文化的共有性についても吟味した。 意図性知覚の形成については、発達心理学的観点からの検討も行なった。誤信念課題を用いた実験の結果は、言語的手がかりを用いて他者の意図を推論する能力の獲得が、従来の心の理論研究で示されてきた結果と比べても比較的早期に成立している可能性を示した。 さらに、他者の感情に関する推論と理解の研究では、日本人大学生と台湾人大学生との比較などを通じて、通文化的な共通点と相異点との両方を明らかにした。 この他、人物や商品に関するステレオタイプ関連情報が、どのように他者に伝達・共有されるのかを調べる実験も多数行なった。 以上の成果を国内外の学会やシンポジウムで報告するとともに、論文・書籍の刊行を行なった。
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