2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15330148
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 良子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (20203185)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 知子 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (20205272)
藤田 潤 京都大学, 医学研究科, 教授 (50173430)
黒川 嘉子 京都大学, 教育学研究科, 助手 (40346094)
|
Keywords | 遺伝カウンセリング / 遺伝子診療における心理臨床 / 遺伝 / 遺伝子検査 |
Research Abstract |
遺伝子診療部での心理臨床実践を行ってきたが、発症前遺伝子検査についても心理検査と心理面接を実施、これらの実施と米国の体制を比較検討し、以下の点を明らかにした。 (1)発症前遺伝子検査の希望者に心理検査を実施することは、クライエントの心的安定度を把握し得るのみならず、遺伝子検査受検と類似の体験を生じさせ、そこに喚起されたクライエントの感情を心理面接で取り扱うことが可能になるとの新たな知見を得た。尚、心理検査としては、我々が今回作成した遺伝SCT・バウムテスト・質問紙を用いたが、結果判明後の援助のためには、遺伝SCTとバウムテストの有効性が示唆された。 (2)上の知見も含め、心理臨床の観点から遺伝カウンセリングの構成要素を促えると、(1)クライエントの来談動機、(2)臨床遺伝専門医から提供される遺伝医学の最新の正確な情報、(3)クライエントによる判断、の3要素が抽出された。(1)は主に遺伝医学的相談として表現されるが、根底には自己の生の基盤・自己同一性・子孫への継承・死・運命等人間の根源的主題があるのであって、無意識的なものも含んだ来談動機についての見立てが必須となる。(2)においては、クライエントの心の状態に対する十分な配慮をもって提供されることが必要である。(3)では、遺伝医学の知識を正確に受け取り、知識の次元を超えて主体的な判断に至る心の次元が重要になる。したがって、遺伝医学の専門家と心理臨床の専門家が協働し、3要素が一体となった体制を作っていくことによって、クライエントの「主体的な判断」が生まれるための援助が可能になる。 (3)以上の知見と昨年から行ってきた米国(メリーランド大学やサウスカロライナ大学)の遺伝カウンセリング体制を比較検討、本研究の意義を示し、ヒトゲノム解析が完了した時代に、人間は遺伝病をどのように受け取るか、本研究から示唆を明らかにした。
|
Research Products
(7 results)