2005 Fiscal Year Annual Research Report
人の顔に特異に反応する事象関連脳電位を用いた重症心身障害児者の顔認知に関する研究
Project/Area Number |
15330151
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
小西 賢三 吉備国際大学, 社会福祉学部, 教授 (60068583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖田 庸嵩 愛知淑徳大学, コミュニケーション学部, 教授 (70068542)
日上 耕司 吉備国際大学, 社会福祉学部, 助教授 (40282313)
山村 健 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (90240077)
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Keywords | 事象関連脳電位 / 顔認知 / 重症心身障害児・者 |
Research Abstract |
重症心身障害児・者の障害の1つに、対人的相互交渉の質的障害が考えられる。対人的相互交渉場面において、対人認知はそれを行う際の重要な手がかりとなるが、その中でも特に顔の認知が大きな比重をもつ。本研究はこのような観点から、客観的な生理学的指標として事象関連電位(ERP)を用い、重症心身障害児・者の顔認知処理の特質を知ろうとするものである。 対象は、54名の重症心身障害者で、「大島の分類」による重症度1、2,4,5,8,10,15,16のものを含んでいた。刺激は、液晶モニター上に提示された縦横それぞれ約10cmの大きさの画像であった。画像は5種類で、それらは、(1)普段、被験者の世話をしている看護士、医師の顔写真、(2)被験者にとって全く未知の人物の顔写真、(3)犬の顔写真、(4)丸い掛け時計の写真、そして(5)太い線画による星形であった。刺激(1)〜(4)は白黒写真であったが、(5)の星形は赤紫色で作成し、被験者の受動的注意を引くようにした。5種類の刺激は、提示時間300ms、刺激間間隔1200ms〜1700msで無作為順に次々と提示された。脳波は、Fz、Cz、Pz、T5、T6部位より両耳朶結合を基準に導出し、ERPは各刺激について、提示前200msから提示後1000ms間を加算平均することにより算出した。 その結果、ERP成分の出現様相に重症度による差異が認められた。重症度の重いものは、ERP波形そのものが不規則である傾向がみられたが、(1)の既知顔に対して他と異なる反応があり、(5)の星形に対してもP300様反応が観察された。重症度の軽いものは、ほぼ健常者に近い波形を示し、顔刺激に対し、未知、既知の差はないものの顔特異電位が観察された。重症度の分類とは別に、日常生活での働きかけに対する反応を「高」「中」「低」に分類したものとの対応をとったところ、「大島の分類」とほぼ同様の結果がみられた。さらに、「遠城寺式」発達指数との関連もほぼ同様であった。 日常生活において、重症心身障害児・者はその行動パタンから、大きな認知機能の障害をもつと考えられがちであるが、本研究の結果からみると、重症度の高い障害児・者においても顔の弁別あるいは新奇刺激に対する反応がある程度可能であることが示された。
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Research Products
(2 results)