Research Abstract |
平成15年度は,フラットシンギング(旋律の音程を下がり気味に歌う)現象の解明のために,音楽専攻/非専攻大学生を対象としたさまざまな実験(予備・追実験を含む)をおこない,複合条件下で派生するフラットシンギングの詳細な実態把握をおこなった。設定した主な条件は,(1)音楽文脈のある条件での歌唱再生,(2)音楽文脈のない条件での単音再生,(3)音楽文脈のない条件での音程再生であり,それぞれ基準ピッチからどのようにずれて歌われているのか,提示刺激による違いはあるのか,性差はあるのか,音程による違い等について繰り返し実験をおこなった。さらに,被験者の音楽能力(音高弁別能力)との関連,発声法の違い,フィードバックの仕方,音楽訓練との相関等についても検討を重ねた。分析にあたっては,KAY CSL 4400とSUGI Speech Analyzerを用いてピッチ解析をおこない,関連学会に出席して,分析方法及び結果・解釈に関する専門家との意見交換を行った。その結果,以下の点が明らかとなった。すなわち(1)純音及びピアノ音が提示された場合に15セント-20セント程度(1/4半音)低く歌われること(2)逆に,ボーカル音に対してはやや高めに歌われること(3)非音楽専攻学生にフラット傾向が強く認められること(4)性差はあまりみられないが,裏声を使用した際に女声のフラット傾向が強くなること(5)音楽文脈のない条件下で,より強く認められること(6)音程による違いがあり,上行4度と下行5度により強く認められること等である。被験者に対するインタビューや内観からは,「純音で提示されるとわかりづらい」「自分でどのようにコントロールしたら良いのか分からない」といった興味深い発言が得られた。尚,分析結果の一部を国内及び国外の学会で発表し高い評価を得た。
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