Research Abstract |
本研究の目的は,日本人中学生の英語の文構造に関する知識の発達状況を,3ヵ年に及び横断的かつ縦断的に追跡調査し,学習者の英語の基礎力育成の妨げとなっている問題点を明らかにするとともに,その改善策を提案することであった。このために,(1)中学校3年間で学習する英語の文構造の抽出と順序付けを中学校学習指導要領外国語(英語)科,および中学校検定教科書(英語)の全6種類から調査・分析した。(2)前述の(1)を基礎に,まず,中学生の英語の構造に関造に関する能力を測定するために,筆記試験4種類とスピーキングテストを作成し,パイロット研究として東京と高知の公立中学校2校で実施した。この結果を基に,スピーキングテストの成績と最も相関の高い2種類の筆記試験に絞り,対象校に実施した。(3)前述の(2)の2種類の筆記試験を継続的に3年間,原則として,同一校の中学生を対象に,年2回調査した(縦断的調査)。同時に,全学年の資料も収集し(横断的調査),資料収集を行った。 15年度より3年間に及び同一校を調査する目的であったが,学校の諸事情により,3力年計画の横断的調査が可能となったのは,いわき市(1校)と高知市(2校)の中学校であった。他の学校からの資料については横断的調査として利用した。 調査の結果,調査対象の12問の文法構造のうち,6問が3年間,10問が2年間,2問が1年間の学習の進歩状況が明らかとなった。(i)教室でよく練習されている一般動詞(e.g. I play tennis every Sunday.)の文は定着度が高いが,余り表現練習のない否定文は習得が遅れる。(ii)過剰な練習が,This is a book.とThis book is about ….との区別・理解を遅らせる傾向がある。(iii)インプットが少ない日本の英語学習環境では,日本による影響が強く残り,I gave a cat some milk.というような文では,語順が,a catとmilkの順番が逆なる傾向が見られた。同様に,日本語にない後置修飾(a man on the right)は,先に最も大切な要素を伝えるという英語の表現方法が学習困難であることが明らかにされた。各調査の後には,学習の進捗状況を協力校にフィードバックし,授業改善に役立てることができるよう会合を持ってきた。さらに本研究の成果報告は国際誌等に公表予定である。
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