Research Abstract |
3ヵ年計画の最終年度として,初年度・第二年度の研究成果を受け,個々の研究課題を発展させるとともに,得られた研究成果の発表,その重要な機会として国際会議の開催に力を注いだ.研究実績では,保存性・安定性を保持する数値解法の研究を推進した.代表者・三井は大規模変数係数常微分方程式系の数値積分への並列化アルゴリズムの構成について研究し,block Rosenbrock型を提唱し,その安定性解析を行った.また,分担者・齊藤善弘と協力して,確率微分方程式の離散近似解の安定性基準を多段階法に拡張して,その解析を行った.分担者・降旗大介および松尾宇泰は,変分的離散解法をさらに展開して,応用問題に登場する多くの非線型偏微分方程式に適用して,成功を収めるとともに,精度の向上と適用領域の拡大をはかり,これら現象を支配する力学系の構造をとらえつつある.分担者・石井克哉は,高解像度結合コンパクトスキームを保存型移流方程式に適用し,その並列化によって高能率計算を実現させた.分担者・岡田正巳は,スプライン関数を用いて,多次元問題にも適用可能な選点法による近似計算に適した関数を構成する方法を研究し,また分担者・前田茂と協力して,wavelet展開による近似解がもつ保存性を考察した.さらに,物理系の具体的な問題に対して保存的数値解法を構成し,系の性質を調べるという立場で,分担者・坂上貴之は球面にある渦層の数値的・数学的研究を行った.渦層の線形安定性解析は,その系の不変部分力学系分解を研究する立場へと発展し,数理流体力学の進展に寄与した.力学系の長時間積分によってその漸近的性質を調べる上では,離散変数法を高度化し,並列計算環境などを活用する必要がある.分担者・杉原正顯は,二重指数函数変換とSinc函数を併用するDE-Sinc数値計算法の研究を遂行した.また,分担者・小藤俊幸は遅延を含む力学系方程式の離散変数法およびfractional differential equationsの離散変数解法を研究した.分担者・杉浦洋は,近似解法の高速化をめざし,自動Chebyshev級数補間の研究および代数方程式に対するNourein法系列の解析を行った.分担者・山本有作は固有値計算の並列高速化を実現させて,こうした長時間積分を遂行する数値的基礎を築いた. これらの研究によって,力学系の保存性・安定性に対応する離散解法の定性的および定量的な性質が明らかとなりつつある.また,今年度に本研究計画の経費による支持も行いながら開催した国際会議2005 International Conference on Scientific Computation and Differential Equationsは,力学系の数値解析に関する内外の多数の研究発表が行われ,同時に研究者間の交流の貴重な機会となって,本計画の意義を高めることができた.
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