2006 Fiscal Year Annual Research Report
大規模相互作用系における相境界の揺らぎの確率論的研究
Project/Area Number |
15340032
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 保成 神戸大学, 理学部, 教授 (60112075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 克司 神戸大学, 理学部, 教授 (60218956)
足立 匡義 神戸大学, 理学部, 助教授 (30281158)
渡辺 清 神戸大学, 理学部, 助教授 (60091245)
吉田 伸生 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40240303)
村井 浄信 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 助手 (00294447)
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Keywords | Percolation / フラクタルグラフ / 鋭い相転移 / シルピンスキーカーペットグラフ |
Research Abstract |
本年度は本課題研究の最終年度にあたる。最初に本年度の研究成果をまとめる。フラクタル構造を持つグラフの上のパーコレーション問題は、グラフが平行移動という性質の良い自己同型群を持たないためこれまでに知られているさまざまな手法が使えない。これによりパーコレーションの相転移についてはあまり知られていなかった。 例外はfinitely ramifiedと呼ばれるフラクタルグラフで、ここでは臨界確率が1という自明な値になることが分かっている。このクラスを離れると、まだ良く知られていないのが現状である。唯一まとまったクラスで扱われているのはシルピンスキーカーペット格子のクラスで、やや技術的と思われる条件のもと、相転移が1点を境として起こり、臨界点以下では連結性関数が指数的なdecayをする事が示されている(いわゆる鋭い相転移:熊谷[1])。ところが、シルピンスキーカーペット格子としてもともと知られているグラフについてこの技術的条件が成立しているかどうかは長い間openな問題であった。本研究では分枝過程の議論を使う事で、このグラフについても同様の鋭い相転移が起こる事を証明した。この結果は学術雑誌に投稿中である。 現在は熊谷氏が[1]で扱ったクラスのグラフについて、上記の技術的な仮定を外して鋭い相転移を証明しようと研究を進めている。 研究計画の中心として目標としていた相分離線の挙動に関する極限定理は、かなり一般的な形でBodineau、Ioffeなどに先行される結果となり、クラスター展開を使った抽象論の開発を目論んでいた当初の計画は、自由エネルギーの解析性を示す段階で技術的なパラメータの制限が外せずに滞っているのが現状である。これに代わって進展して来たのが上述したパーコレーションの研究で、今後、first passage percolationを通して相境界の問題の解析につなぐ事ができれば更に大きな成果を得る事ができるだろう。 文献 [1]T.Kumagai, in : New trends in Stochastic Analysis, (Eds. K.D.Elworthy et al.)1997,288-304.
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