2004 Fiscal Year Annual Research Report
C_<60>単結晶における励起状態の緩和ダイナミクスと光伝導機構
Project/Area Number |
15340098
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
神野 賢一 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80024339)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 千尋 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (60211744)
秋元 郁子 和歌山大学, システム工学部, 助手 (00314055)
|
Keywords | フラーレン / 光伝導 / 飛行時間測定 / 光キャリア / フレンケル励起子 / 電荷移動励起子 / 熱解離 / 緩和ダイナミクス |
Research Abstract |
ホッピング拡散や、熱解離エネルギー、欠陥による捕獲と再解離など、C_<60>単結晶における光キャリア生成に関与する物理パラメータは多様であるが、本研究では、光キャリアの最終生成量子効率を規定している因子が何か、何がどのように変化する結果キャリアー発生に至るのかを明らかにしようとしている。特に相転移と光学物性の関連を明確にするには、個々のドメインを特定した上での分光実験が必要になる。また、キャリアの生成・消滅の機構を特定する上で、光励起が誘起する発光と光伝導の静的並びに動的相関を明らかにすることが極めて重要と考えられる。そこで本年度は顕微測光ユニットと分光検出器とを購入して既設光学系と組み合わせて整備し、他方で飛行時間測定(TOF)法による光伝導の時間分解測定システムを立ち上げることで、特定部位からの顕微ラマン散乱・蛍光検出とTOF光伝導の同時測定をめざした新たな分光実験をスタートさせた。 気相成長法で作製したC_<60>単結晶について、非接触型の電圧印加下において、波長可変ナノ秒レーザーパルス(1.9-3.8eV,10Hz)を励起源とした飛行時間測定(TOF)法による光伝導の時間分解測定を実施し、温度、励起波長をパラメータとして光キャリアの生成量や輸送過程の時間応答性を調べた。その結果、主キャリアである電子の生成過程は熱活性型であり、キヤリア生成量は励起波長に依存するが、輸送過程を反映する時間応答は励起波長に依らないことが明らかになった。一方、吸収端領域での光伝導スペクトルの構造に関する前年度の研究から、吸収端付近の励起ではフレンケル励起子の熱解離によりキャリアが生成していることは確実である。従って、C_<60>単結晶における光キャリアは、各種素励起の初期緩和過程を経て最終的に生き残った安定なフレンケル励起子が熱解離することによって生成され、その後は共通の輸送過程を経ると結論することが出来る。これを裏付ける事実として、光キャリア生成量の温度依存性が局在励起子の発光強度の温度依存性と反相関を示すことも確認された。局在励起子はフレンケル励起子ホッピング拡散の途上で欠陥サイトに捕獲されて生じるが、温度上昇に伴ってフレンケル励起子がホッピングの途上でキャリアに熱解離するため、局在励起子への捕獲過程が抑制されると考えることが出来る。
|
Research Products
(4 results)