2003 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロチップカロリーメーターによるドープ型有機超伝導体の極低温熱異常の検出
Project/Area Number |
15340116
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中澤 康浩 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60222163)
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Keywords | 熱容量 / マイクロチップカロリーメーター / 超伝導 / ホールドープ / 電子状態 |
Research Abstract |
本研究はキャリアーがドープされた特殊な電子状態をもつ有機超伝導体の超伝導相およびその相と密接に関係した周辺電子相の熱力学的特性を微小セルを用いた新しい比熱測定装置(マイクロチップカロリーメーター)を用いて解明することを目的として計画された。平成15年度は、新たにデザインした微小測定セルの試作を中心に進めた。研磨加工した微小測温素子チップと特注の小型ヒーターを用い、熱リーク部位に工夫を加えたタイプのチップでは、最低温度でサブnJ/K程度の微少量熱容量を精度、確度ともに1%以内で測定を実現することができた。様々な角度から調整を行った結果、^3Heを用いた1K以下の極低温条件、磁場下で目的とする基準を満たすことが可能となり、これを用いていくつかの試料測定をスタートした。また、測温素子を温度計兼試料ステージとして配置し新たに設けた温度制御プレートの温度に一定の周波数で変調を加えることにより試料の温度変調を交流測定により高感度に検出する熱浴変調型比熱測定については、チップ部の製作は終了し現在測定系の開発を進めている。 上記1番目のチップを搭載した熱容量測定装置を用いて、バンド充填度が3/4である電子状態に3%程度のホールがドープされた超伝導体である(MDT-TTF)(AuI_2)_<0.436>(T_c=4.3K)のゼロ磁場、磁場下での測定により、3.8K付近に超伝導転移に特徴的な熱異常を検出した。転移そのものはブロード化しているが6Tまでの磁場での対破壊による転移の変化が明確に観測された。ドーピングをおこす起源であるドナー層とアニオン層の構造的な不整合が、ドナー層に特徴的な静電ポテンシャルを及ぼし、転移のブロード化を起こしていると思われる。相転移に伴う熱異常の変化に関して磁場下でのより詳細な分析を行うことによって、熱容量ピークの内部構造に関する解析を進めることが必要課題として新たに生じた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Nakazawa, A.Sato, M.Seki, K.Saito, K.Hiraki, T.Takahashi, K.Kanoda M.Sorai: "Spin-Peierls Transition of Quasi-One-Dimensional Electronic System (DMe-DCNQI)_2M(M=Li, Ag) Probed by Heat Capacity"Physical Review B. 68. 085112-1-085112-8 (2003)
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[Publications] A.Naito, Y.Nakazawa, K.Saito, H.Taniguchi, K.Kanoda, M.Sorai: "Low-Temperature Heat Capacity Measurements of K-(BEDT-TTF)_4Hg_<2.89>Br_8"Physica C. 388-389. 595-596 (2003)
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[Publications] K.Saito, S.Ikeuchi, Y.Nakazawa, X.-G.Zheng, M.B.Maple, M.Sorai: "Phase Diagram of Lithium-Doped Copper Oxide Cu_<1-x>Li_xO"Solid State Communication. 125. 23-26 (2003)
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[Publications] S.Ikeuchi, K.Saito, Y.Nakazawa, M.Mitsumi, K.Toriumi, M.Sorai: "Calorimetric Study of a Halogen-Bridged MMX Chain Complex Having Alkyl Chains, Pt_2(n-PrCS_2)_4I (n-Pr=Propyl Group)"Journal of Physical Chemistry B. 108. 387-392 (2004)