2003 Fiscal Year Annual Research Report
未踏領域高圧下NMRの開発と圧力誘起量子ゆらぎ効果の研究
Project/Area Number |
15340119
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小林 達生 岡山大学, 理学部, 教授 (80205468)
|
Keywords | 超伝導 / 重い電子系 / 高圧 / NMR / CeCu_2Si_2 |
Research Abstract |
本研究では従来NMRが不可能であった5GPa域高圧下までのNMRを行うことにより,高圧下で誘起される電荷ゆらぎや軌道ゆらぎ効果をミクロスコピックな視点から明らかにすることを目的としている. 本年度は重い電子系超伝導体CeCu_2Si_2の高圧下NMRを重点的に行なった.CeCu_2Si_2の超伝導は磁気ゆらぎによるものと考えられているが,高圧下でのTcの増大については磁気不安定点から離れたところで起こっているため,その超伝導発現機構の解明は本研究での最重要課題である. 現時点で4.0GPaまでの高圧発生とCu-NQR信号の観測に成功し,NQRスペクトルの圧力依存性とO.1Kまでの核磁気緩和時間T_1の温度変化の測定を行った.超伝導転移温度はこれまでの報告にあるとおり1.7Kまで上昇している.現在実験を進行中であり,4.5〜5.0GPa程度までの測定を行なう予定である.現状では,NQRスペクトルの圧力依存性は圧力に比例して変化し,理論的に指摘されている価数転移の兆候は観測されない.常伝導状態のT_1の温度依存性は,4.0GPaでは通常の金属に見られるKorringa則(T_1T=const.)に従い,超伝導状態のT_1はT^3に比例するギャップレス超伝導の振舞いを示す.最低温領域で残留状態密度の存在を示すKorringa則が観測されることが特徴的である. 高圧セルの開発については,NMR信号のS/N改善のため,絶縁体ZrO_2製のインデンターを用いた高圧セルの開発を行なった.その結果,S/Nは改善されるものの,ZrO_2が破損しやすいため高圧発生に問題があることがわかった.従来のタングステンカーバイトを用いた高圧セルでS/Nのよいコイル配置を検討し実験を進めている.より高い圧力の発生が緊急の課題であり,今後高圧セルのデザインを検討・改善する.
|