2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15350001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊丹 俊夫 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40113518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 匡人 学習院大学, 理学部, 教授 (40337902)
水野 章敏 学習院大学, 理学部, 助手 (10348500)
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Keywords | 液体金属 / 共晶合金 / 濃度揺らぎ / 過去冷却 / ミクロ凝固 |
Research Abstract |
本研究者が始めて見出した共晶合金系の均一液相に発生する巨大な揺らぎ構造の存在の広範な系における実在の検証とその構造の詳細解明を目的にしている。本年度においては、ひとつの系に複数の共晶点を持つ共晶系、Cd-Sb,Zn-Sb,およびBi-Te系液体合金の電気抵抗の精密測定を実施した。これまでの測定精度より格段に向上した測定を実施することで、従来から報告されている金属間化合物組成における電気抵抗異常をいずれの系においても否定した。これに替って、共晶点近傍における均一液相の電気抵抗の温度係数の異常を見出し、共晶点近傍の均一液相における揺らぎの存在を確実に実在するものと明らかにした。さらに、Bi-Te系については揺らぎの体積分率の評価に成功し、融点近傍では5%程度の体積分率で揺らぎが発達していることを明らかにした。これらの結果は欧文誌にすでに発表している。この揺らぎは固相変化における2固相析出のミクロな前駆現象であることを明らかにした。そこで、この均一液相の揺らぎの存在は均一液相の過冷却現象を妨げることに着目して過冷却実験を検討実施した。従来、共晶点近傍の液体は低温であることからガラス形成能が高いと考えられてきた。しかし、本研究者は揺らぎ構造の発見を通じてこの考えが単なる迷信に過ぎず、本来、「共晶組成の液体は過冷却しない」という独自の見解に至っている。そこで、文献探査により均質核生成実験例から「共晶組成の液体は過冷却しない」という事例を2,3見出している。これらについてはこれまでの共晶系の研究の総合報告として外国欧文誌に投稿済みである。さらに"深い共晶系"のAu-Ge系について過冷却実験を実施し、「共晶組成の液体は過冷却しない」という結果を自ら見出している。これらの結果は次年度の金属学会春季大会に口頭発表し、その後、論文発表予定である。この「過冷却が共晶組成で無い」という事実は、本研究者によりはじめて見出された均一液相における揺らぎの存在を強く支持するものである。この揺らぎ構造の解明のためには高速計算機による大規模シミュレーッションが不可欠である。液体状態のシミュレーッションの前段階として原子を空間に固定して考えることのできる固体状態の密度汎関数法による大規模バンド計算を実施した。揺らぎ系とは対極の化合物形成系ではあるが、非常に興味深い結果を得ている。これらの結果についても次年度春季金属学会で発表予定である。
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Research Products
(6 results)