2004 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合を触媒とした気相ナフトールの光誘起シスートランス異性化反応の研究
Project/Area Number |
15350002
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
江幡 孝之 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70142924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 直彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70004447)
藤井 朱鳥 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50218963)
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Keywords | ナフトール / コンフォメーション / 異性化 / 触媒 / シス体、トランス体 / 超音速分子線 / 紫外-赤外二重共鳴分光法 |
Research Abstract |
ナフトールには、水酸基のナフタレン環に対する配向の違いによりシス、トランス体の2つの回転異性体が存在する。レーザー光を用いたシス【tautomer】トランス体間の異性化の可能性についてはこれまで多くの研究者が議論してきたが、実現にはいたらなかった。C-C結合のような単結合周りの回転から生じる異性体の研究は分光学的に興味があるだけでなく、生体分子で代表されるフレキシブルな構造を持つ分子のコンフォメーションダイナミックスを研究する上で基本的な情報を与えると期待される。 本研究は、ナフトールのシス【tautomer】トランス異性化のレーザー操作を行うとともに、異性化反応のメカニズムやダイナミックスを解明することを目的とした。シス【tautomer】トランス異性化は、水酸基のC-O軸周りの回転運動により起きるが、実験を遂行するにあたって、次の2つの問題点が挙げられた。 (1)レーザー入射したエネルギーが、高い効率で異性化障壁を越えるエネルギーに変換されるか。 (2)反応の出発点として、シス体、トランス体の選別ができるかどうか。 これらの問題点を克服する方法として、本研究では紫外-赤外二重共鳴分光法を用いた。紫外パルスレーザーにより超音速ジェット中のシス体、トランス体ナフトールの一方の異性体のみを選別して電子励起し、その直後に赤外パルスレーザー光を入射し、X-H振動を励起した。ここでXはC、N、O原子である。X-H振動に励起されたエネルギーは速やかに分子内振動エネルギー再分配により他の振動モードへエネルギー緩和し、一部が異性化反応座標へのエネルギーに変換され異性化が進行すると予測した。 実験は、1-、2-ナフトールの単体とその水素結合クラスターについて行った。その結果、単体では、実験可能な3500cm^<-1>の赤外エネルギーを入射しても異性化反応が観測されなかったが、水素結合体では、2900cm^<-1>のエネルギーで異性化が起こることが確認された。これらの実験から、シス【tautomer】トランス異性化反応のレーザー操作が可能であることを実証するとともに、水素結合形成が異性化反応の触媒的役割を果たすことが明らかになった。
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Research Products
(6 results)