2004 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外領域におけるフェムト秒光パルスを利用した分子分光法の展開
Project/Area Number |
15350005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90232678)
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Keywords | フェムト秒 / 時間分解 / 近赤外分光法 / 電子移動反応 / ビアンスリル / 偏光測定 |
Research Abstract |
研究代表者らは,昨年度に引き続いてビアンスリルの分子内電子移動反応についてフェムト秒時間分解近赤外分光法を用いて研究した.今年度は,次のような新たな成果を得た. (1)偏光測定の利用と電荷分離過程に関する新たなモデルの提案 近赤外領域に観測されるビアンスリルの孤立励起(LE)状態からの遷移は,アントラセン環の長軸方向に遷移モーメントを持つ.一方,電荷移動(CT)状態からの遷移および基底状態からLE状態への遷移は,ともに環の短軸方向に遷移モーメントを持つ.このため,時間分解近赤外吸収の偏光測定を行えれば,LE吸収帯とCT吸収帯を精度よく分離できる.この測定は容易ではないが,今年度研究代表者らはこの実験に成功した.非極性溶媒中での測定と極性溶媒中での測定の結果を比較することで,2種類の電荷分離状態があることを見出した.遅延0ピコ秒では,非極性溶媒中と極性溶媒中の双方で部分的に電荷分離した状態が観測される.一方,3ピコ秒後には,極性溶媒中のみで通常の電荷分離した状態が観測される.溶媒が極性か非極性かを問わず光励起によって部分的に電荷分離した状態が生成するが,極性溶媒中でのみこの状態が安定化されて通常の電荷分離状態が生成するものと考えられる. (2)対称および非対称置換ビアンスリルでの電荷移動状態 研究代用者らは,ハイデラバード大学のサマンタ教授らとの共同研究で,対称および非対称置換ビアンスリルの時間分解近赤外吸収分光測定を行った.その結果,対称置換体および無置換体では近赤外領域にCT吸収帯が観測されるが,非対称置換体ではこの吸収帯が観測されないことが分かった.この結果は,近赤外領域に観測さるCT吸収帯が電荷共鳴吸収に類似した機構で出現することを強く示唆する.
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Research Products
(2 results)