2004 Fiscal Year Annual Research Report
反応余剰エネルギー分布の定量測定による溶液内光反応メカニズムの解明
Project/Area Number |
15350013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 助教授 (60270469)
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Keywords | 振動緩和 / 共鳴ラマン分光法 / 時間分解分光法 |
Research Abstract |
反応余剰エネルギーの緩和は、液相中での化学反応を理解するうえで非常に重要な過程である。初期の振動励起状態およびそこからの分子内、分子間緩和過程を調べるにはアンチストークスラマン線強度が直接的なプローブとなる。一酸化炭素結合形ミオグロビンの光解離反応では、解離直後に振動励起されたヘムが生じる。われわれは一酸化炭素結合形ミオグロビンの光解離状態について、面内振動や面外振動の各モードの振動エネルギー緩和速度を求めた。デオキシ形の紫外・可視吸収スペクトル、ラマン励起プロファイルを解析し、振動励起温度を求めた。面内振動モードと面外振動モードとの間で、振動温度に大きな違いが見られた。これは面内振動と面外振動との間の非調和性結合が小さいことに由来すると考えられる。面内振動モードと面外振動モードとの間には、振動緩和の時定数にも違いが観測されており、今回の結果はこれとも矛盾しない。ミオグロビンでは、ヘムのプロピオン酸基が溶媒に露出しており、これがヘムから水への振動エネルギー緩和の経路になっているという分子動力学計算の結果が報告された。そこで、プロピオン酸基を欠くヘムをミオグロビンに再構成し、ヘムの振動緩和を調べた。天然ミオグロビンと再構成ミオグロビンとでは、振動緩和の時定数に有意な差は見られなかった。したがって、プロピオン酸基が振動緩和の経路になっているという計算結果は再検討を要することが明らかになった。
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