2005 Fiscal Year Annual Research Report
内殻励起を利用したスピン禁制イオン化・励起状態の研究
Project/Area Number |
15350017
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
小杉 信博 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 教授 (20153546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁政 英治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教授 (90226118)
初井 宇記 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 助手 (40332176)
樋山 みやび 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 助手 (90399311)
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Keywords | 軟X線発光分光 / 共鳴ラマン散乱 / 共鳴光電子分光 |
Research Abstract |
内殻励起状態を中間状態とした場合、共鳴軟X線光電子スペクトルや共鳴軟X線発光スペクトルを測定すると、スピン禁制状態の情報を得ることができる。本研究では、3年間の研究期間の間に、共鳴光電子放出によってスピン禁制な価電子イオン化状態、共鳴軟X線発光によってスピン禁制な価電子励起状態をそれぞれ解明すること、特に実験手法、理論手法を確立すること、を目的とした。 最終年度の平成17年度に理論面、実験面で以下のような成果を得ることができた。 理論面では、前年度に開発した内殻励起・イオン化の統一的解析が可能なR-Matrix/MQDT法による精緻な理論的手法を用いて、禁制遷移状態の電子構造が複雑で従来の方法では理論的扱いが困難な開殻分子に応用した。具体的には一酸化窒素分子と酸素分子の内殻共鳴である。価電子励起・イオン化との比較を行い、分子固有の性質によるものと内殻固有の性質によるものを区別して議論した。本研究によってスピン禁制状態の解析に活用できる新たな理論手法を確立することができた。 一方、実験面では、前年度エネルギー分解能1500までが得られていた新規軟X線発光分光器に、新たに開発した高精度入射スリットを導入することで、エネルギー分解能4500を達成した。これは現在の世界的な水準を大幅に上回る性能である。また、炭素や窒素内殻が関与する軟X線発光のエネルギー領域にも対応できるCCD検出器を開発し動作を確認した。透過型回折格子についても炭素や窒素内殻領域に対応できるものを設計した。本研究によって世界で最初に次世代型軟X線発光分光器の開発に成功し、スピン禁制状態を分解能よく分離して観測できる実験手法を確立することができた。また、光電子分光の装置を改良し、分子が数個集まったクラスターを形成することで出現する禁制遷移(単分子では禁制)を観測できるようにした。
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Research Products
(7 results)