2006 Fiscal Year Annual Research Report
結晶多形制御による構造選択的な有機結晶作成法の開発と一般化に関する研究
Project/Area Number |
15350023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 類 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 教授 (60207256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津江 広人 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 助教授 (30271711)
高橋 弘樹 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 助手 (00321779)
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Keywords | 結晶多形転移 / 有機結晶 / 優先富化現象 / ラセミ混晶 / 相変化 / 光学分割 / X線結晶構造解析 / 過飽和溶液 |
Research Abstract |
平成18年度は、新たに優先富化現象を示すことが明らかとなった一群のアンモニウスルホナート化合物に注目し、それらの結晶化の際に起こる多形転移のメカニズムについて検討した。その結果、これまで報告した様式とは異なる新たな溶媒アシスト型固相多形転移(ガンマ多形からアルファ_1多形へ)が進行し、優先富化現象が発現することが明らかとなった。この多形転移様式は予想外であったため、その理由について考察し、優先富化現象の原因となる多形転移のメカニズムには柔軟性があることが判明した。さらに、この新しい系について、適切な種結晶を添加して多形転移の様式を制御することにより、優先富化現象の誘起と阻害を制御できることが明らかとなった。すなわち、種結晶の表面で多形転移(エピタキシャル転移)が起こることを確認することができた。今後、このエピタキシャル転移の概念は有機結晶の多形制御を行う上できわめて重要な指針を与えると考えられる。 上記の研究と並行して、優先富化現象のメカニズムで未だ不明な点について詳細な検討を行った。その結果、優先富化現象は、非平衡複雑系の光学分割現象であることが決定的となった。すなわち、結晶化の際の多形転移は、カオス間の相転移に対応し、相転移により対称性の破れが容易に起こる。さらに溶液中ではホキラルなエナンチオマーの一次元鎖構造が安定に存在するため、一方のエナンチオマーの増幅が異常に進行し、析出結晶中では他方のエナンチオマーが若干過剰となる。 以上のように、優先富化現象に関する研究により、「結晶多形制御による構造選択的な有機結晶作成法」に必要なエピタキシャル転移の概念を提案することができた。
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