2003 Fiscal Year Annual Research Report
六核クラスター骨格を基本とした第二世代八面体型錯体化学
Project/Area Number |
15350029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 陽一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30004500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柘植 清志 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60280583)
阿部 正明 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90260033)
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Keywords | 金属クラスター / 六核錯体 / レニウム錯体 / 発光性錯体 / 配位子置換反応 / 自己集積化膜 / 酸化還元反応 / 配位子間相互作用 |
Research Abstract |
レニウム(III)、モリブデン(II)、タングステン(II)等のd^4重遷移金属イオンは、金属間結合を持つ八面体型六核構造のクラスター骨格、M_6(μ_3-E)_8、(Eは六核内の各M_3三角面上に配置、キャップ位と呼ぶ)を作りやすい。この構造は、各金属イオンに外側に向かう配位部位(ターミナル位)が1ヶずつあり、この計6ヶの配位部位を見たとき、巨大な八面体型配位中心と見立てることが出来る。本研究の目的は、この巨大八面体型中心を六配位八面体型の単核金属イオンと見立てて、新しい八面体型錯体化学を展開することである。本年度はRe六核錯体を対象として研究を進め、次に示すような成果をあげた。(1)新規錯体の合成:ターミナル位にNCS^-が6ヶ配位した錯体をM=S, Seの2つの場合について合成し、そのX線構造解析結果および発光特性を明らかにした。NCS^-錯体は既知のRe六核錯体と比較しても最も強い発光を示す部類に入る。(2)配位子置換反応:ターミナル位の配位子置換反応を配位pyridineと溶液内のpyridineの交換反応の速度論的研究により調べ、単核錯体と異なる特異な反応性を明らかにした。すなわち、(i)置換反応の速度が単核のd^4Re(III)錯体に期待されるものよりかなり小さい。(ii)ターミナル位にCl^-とpyridineを含む混合ターミナル配位子錯体では、pyridineの方が選択的に置換される。(iii)pyridine交換反応は、完全に幾何異性体の構造を保持したまま起こる。また、交換反応はpyridineの数が多い錯体ほど遅くなることも分かった。(3)酸化還元相互作用:ターミナル位に酸化還元活性な配位子、4,4'-bipyridine、4-benzoylpyridine、4-cyanopyridineをそれぞれ6ヶ導入した錯体をE=S, Seの両方の場合について合成し、それらのいくつかについてX線構造解析を行った。これらの錯体の溶液中でのサイクリックボルタモグラムを測定すると、配位子の酸化還元波が、6ヶに分裂するという特異な酸化還元挙動が見られた。これは、一つの配位子の酸化還元の情報がRe六核骨格を通して他のターミナル配位子に伝搬することを示し、Re六核骨格が一種のπ相互作用伝達系となっていることを意味する。(4)Re六核錯体の金電極基板上への導入:金電極上に自己集積化したRu3核錯体上に、架橋配位子として4,4'-bipyridineを含むRe六核錯体を連結させたRu_3-Re_6複合二層膜の構築に成功した。先に、我々は同じRu3核ユニットを金基板上に5層積層させることに成功していたが、今回得られた2層膜は異なる金属クラスターユニットを2層積層させた初めての例である。この膜は、二つのユニットのそれぞれの酸化還元波を示す。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Tannnai: "Monodentate and Bridging Coordination of 2,5-Dimercapto-1,3,4-thiadiazolate to a (2,2':6',2"-Terpyridine) platinum(II) Center"Dalton Transactions. 11号. 2353-2358 (2003)
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[Publications] A.Mitani: "η^3-Coordination of Hexadentate N, N, N', N'-Tetrakis (2-pyridyl-methyl)ethylenediamine (tpen) to a Mononuclear fac-Re^<VII> Center"Chemistry Letters. 34巻6号. 502-503 (2003)
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[Publications] M.Abe: "Electrochemical Control over Layer-by-layer Deposition of Metal Cluster Molecular Multilayers on Gold"Angewandte Chemie, International Edition. 42巻25号. 2912-2915 (2003)
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[Publications] T.Yoshimura: "Preparation, Structures, and Redox and Emission Characteristics of Isothio-cyanate Complexes of Hexarhenium(III) Clusters, [Re_6(μ_3-E)_8(NCS)_6]^<4->"Inorganic Chemistry. 42巻10号. 4857-4863 (2003)
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[Publications] T.Yoshimura: "Structural Studies on the Stepwise Chelation Processes of Bidentate 2-Aminomethylpyridine and Tridentate Bis(2-pyridylmethyl)amine towards Acetate-bridged Dirhodium(II) Center"Inorganic Chemistry. 42巻22号. 7106-7115 (2003)
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[Publications] J.-K.Chen: "Syntheses, Structures, and Electronic Redox Properties of Dimeric Triruthenium Clusters Bridged by Bis(diphenylphosphino)acetylene and -ethylene"Inorganic Chemistry. 43巻4号. 1481-1490 (2004)