2004 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶X線構造解析法による多核金属錯体の光励起構造の解明
Project/Area Number |
15350036
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小澤 芳樹 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 助教授 (40204200)
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Keywords | 光励起構造 / 単結晶X線構造解析 / 放射光X線構造解析 / 金属錯体 / 多核銅錯体 / 多核白金錯体 |
Research Abstract |
多核金属錯体の光照射下での励起構造を直接観測する目的で,大型放射光施設SPring-8の協力なX線源と連続発振可視光レーザー組み合わせた光照射単結晶X線回折計の開発と実験を行った.光照射時の非照射時に対するX線回折強度の変化を精密に測定するために,光照射時および非照射時の回折像を1つのイメージングプレート検出器に同時に記録する多重露光法を用いた.光照射に伴う結晶温度の変化を最小限に抑えるために,励起光とX線を機械的チョッパーで断続させ,光照射時と非照射時の結晶温度の変化を0.5K以下に押さえることに成功した.この装置を用い,以下の金属錯体単結晶の光照射回折実験を行った. 1.青色光の照射下で1msを超える長寿命の赤色発光をする錯体であるジハロゲノロジウム三価テトラピリジンのは,光照射によるd-d遷移に伴って軸配位子のハロゲンと中心金属のロジウムとの結合距離が伸びると予想されていたが,光励起X線構造解析の結果から,ロジウム-ハロゲン結合に垂直方向にハロゲン原子が振動していることが観測された.これより光照射下での分子の振動励起状態がX線構造解析により直接検出されたと考えられる.光励起状態で錯体は分子の対称性を低下させることによって寿命の長い3重項状態を実現させていること示唆している. 2.高い発光量子効率をもつヨウ化銅(I)複核ユニットをジイミン配位子で架橋した無限鎖の錯体は常温で紫外光照射により高量子収率の黄色発光を示す.単結晶光励起構造解析の結果から,銅原子の周りの架橋した2つのヨウ素原子同士が離れるように移動することが検出された.2つの銅原子は,ヨウ素とで形作る面より,互いに反対方向へ面外に移動する傾向が見られた.このことから光照射下では,銅の周りの四面体配位環境が変化し,分子が変形ことがしめされた.
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