2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15350087
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊地 耕一 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (40177796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 順一 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教授 (90191311)
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Keywords | キラル / 分子超伝導体 / TCNQ錯体 / ラジカル塩 / 電気伝導度 / 結晶構造 |
Research Abstract |
キラルな(S,S)-DMBEDT-TTFが圧力下での超伝導体κ-[(S,S)-DMBEDT-TTF]_2ClO_4(T_c=3.OK at 5.8kbar, J.S.Zambounis et al., Adv.Mater., 1992, 4, 33)を与えるのに対し、meso-DMBEDT-TTFはドナーパッキング様式の異なる超伝導体【◯!R】-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6(T_c=4.3K at 4.0kbar)を形成することが報告された(S.Kimura et al., Chem.Commun, 2004, 2454)。この結果は、ドナー分子における二つのメチル基の立体化学(シスとトランス)を変えることによって、異なったドナーパッキング様式の構築が可能であり、さらには物性を制御できる可能性があることを示唆している。そこで、前年度に合成した(R,R)-DMDO-MDDH(1)のシス異性体であるmeso-DMDO-MDDH(2)の合成を成し遂げた。両者のTCNQおよびTCNQF_4錯体を作製し、ペレット状態での伝導度測定を行った結果、1のTCNQ錯体(σ_<rt>=5.2S/cm,E_a=8.2meV)は2のTCNQ錯体(σ_<rt>=7.7×10^<-1>S/cm,E_a=46meV)より良好な伝導性を示したが、1のTCNQF_4錯体(σ_<rt>=1.2×10^<-3>S/cm,E_a=180meV)の伝導性は2のTCNQF_4錯体(σ_<rt>=30S/cm,E_a=7.2meV)より劣っていた。このように、1と2の電荷移動物質は異なる物性を示すことを明らかにしたので、さらに両者の電荷移動塩の作製を試みた。しかし、現在のところ、構造解析に適した単結晶を得るまでには至っていない。 一方、BDH-TTPのジメチル体であるDMDH-TTP(3,シス体とトランス体の混合物)の合成に成功し、電荷移動塩の作製を行った。その結果、(DMDH-TTP)_2X(X=AsF_6,PF_6)が単結晶で得られ、これらの塩は低温(4.2K)まで金属的であり、同型構造であることを明らかにした。構造的特徴は、β型のドナー層とβ"型のドナー層がアニオン層を挟んで交互に配列していることである。さらに注目すべきは、混合物のドナーを用いて結晶育成を行ったにもかかわらず、構造解析に用いた単結晶にはシス体であるmeso-DMDH-TTP(4)だけが含まれていたことである。現在、キラルな(S,S)-DMDH-TTP(5)の合成に着手しており、今後、4と5の電荷移動物質の構造と物性における相違点と類似性を明らかにする予定である。
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