Research Abstract |
MS樹脂の耐衝撃性の向上を目的として,微細なブタジエン系ゴム粒子を分散させたMBS樹脂が開発され実用化されている.MBS樹脂の応用範囲をさらに拡大するためには更なる高性能化が必要であり,そのためにはゴム粒子の構造制御を行うことが重要である.その有効な方法として,ナノサイズとマイクロサイズの2種類のゴム粒子を分散させるバイモーダル分散を採用することで高性能化の実現が期待されている.本研究では,これまでにさまざまな2種類の粒子径を用いて試料を作製し,静的ならびに衝撃三点曲げ試験を行うことにより,破壊強度に及ぼすバイモーダル分散の有効性を明らかにしてきた.本年度の研究では,異なる破壊モード,すなわち衝撃引張り負荷でのMBS樹脂の破壊特性を定量的に評価することを目的とした.試料として,小粒子(粒径140nm)と大粒子(0.4μm)が分散するバイモーダル分散型MBS樹脂を用い,衝撃引張り負荷での破壊エネルギE_f,弾性エネルギE_e,非弾性エネルギE_nの影響を検討した.その方法として,衝撃引張り装置と高速度変位計を応用して衝撃荷重と変位を計測し,試験片に作用する外力仕事U_<ex>を求めた.また試験片の破断直後の振幅よりE_eを求めることによりE_fを評価した.さらに破面の面積A_sを用いて,エネルギ解放率をG_t=U_<ex>/A_s,G_f=E_f/A_sで求め,破断荷重P_c,き裂速度との対応関係を検討した.そして以下の新しい知見を得た. (1)P_cが大きくなると,E_e/U_<ex>値は減少,E_f/U_<ex>値は増加した.(2)E_f/U_<ex>値は,P_cの小さいところでは約40%,また比較的大きいところでは約60%を示した.(3)P_cが大きくなると,G_t,G_f値は増加した.(4)G_tはE_eとE_nを含むため過大評価となる.(5)G_fとき裂速度には依存関係が存在する.すなわち,衝撃引張り破壊エネルギを定量的に評価することにより,MBS樹脂の詳細な材料設計が可能となることを明らかにした.
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