Research Abstract |
本研究の目的は,従来の加圧成形型RBセラミックスの製造方法では実現不可能である寸法収縮率が小さく,複雑形状や量産品の製造に適した新しいRBセラミックスの製造方法を開発し,摺動部材への応用を図ることである. 平成16年度では,RBセラミックス粉体(75wt%)とフェノール樹脂(25wt%)を混練したペレットを用いて,射出成形により所定の形状に成形した後,この成形体を900℃,窒素ガス雰囲気中にて炭化焼成することにより製造される射出成形型RBセラミックスの大気中無潤滑下,油潤滑下におけるトライボロジー特性を明らかにした.大気中無潤滑下においては,アルミナ(Al_2O_3),高炭素クロム軸受鋼(SUJ2),ステンレス鋼(SUS304)を相手材として,幅広いすべり速度,ヘルツ最大接触圧力条件下で実験を行った.また,油潤滑下においては,相手材を高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)として,同様に幅広いすべり速度,接触圧力条件下で実験を行った. 得られた主な結果は以下のとおりである. 1.大気中無潤滑下において,射出成形型RBセラミックスは,相手材料によらず,0.002m/s〜3.0m/sのすべり速度,100MPa〜300MPaのヘルツ最大接触圧力条件下において,およそ0.2あるいはそれ以下の低い摩擦係数を示す.また,相手材によらず,すべり速度の増加に対して,ほぼ一定の摩擦係数を示すことから,スティック・スリップ抑制効果を有する. 2.大気中無潤滑下において,射出成形型RBセラミックスの比摩耗量は,相手材によらず,幅広いすべり速度,接触圧力条件下において1×10^<-9>mm^2/N以下の極めて低い値を示し,耐摩耗性に極めて優れる.また,相手材に用いた各種ボール材の比摩耗量も幅広いすべり速度,接触圧力条件下において1×10^<-10>mm^2/N以下の極めて低い値を示すことから,射出成形型RBセラミックスの相手攻撃性は極めて低い. 3.油潤滑下において,射出成形型RBセラミックスは,多孔質構造を有するにも関わらず,流体潤滑が実現されることが判った.また,射出成形型RBセラミックスは,ストライベック曲線から,青銅と比較して,混合潤滑へ移行するゾンマーフェルト数が小さく,流体潤滑へ移行しやすいことが判った. 以上のことから射出成形型RBセラミックスは,大気中無潤滑下において,すべり軸受として実用に十分耐えうる摩擦・摩耗特性を示し,また,油潤滑では,従来のすべり軸受材料をしのぐ特性を示すことから,油中でのすべり軸受材料としても十分実用化の可能性を有する材料であることが明らかとなった.
|