Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水沼 博 東京都立大学, 工学研究科, 助教授 (20117724)
諸貫 信行 東京都立大学, 工学研究科, 助教授 (90166463)
楊 明 東京都立大学, 工学研究科, 助教授 (90240142)
小方 聡 東京都立大学, 工学研究科, 助手 (50315751)
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Research Abstract |
近年,地球温暖化防止や省エネルギーの観点から流体抵抗低減化が注目されている。流体抵抗は流体とそれが接する固体境界との相互作用であると考えると,流体の物理的性質を変化させるか,固体境界を変化させるかの二つの方法に分類される.さらに,対象とする流れ場は乱流と層流域に分類される.通常工業的に見られる多くの流れは乱流であり,乱流域の抵抗減少効果はその乱れを緩和することによって得られ,それらに対する抵抗減少効果に関しては従来から非常に多くの研究がなされている.しかしながら,層流域のものは非常に少ない. 一方,近年のナノ・マイクロ関連技術やマイクロマシンの発達により,流れ場のスケールが非常に小さい流れ場が注目されつつある.そこでは流れは層流であり,その流動抵抗は粘性損失が支配的であり,その抵抗低減を得ることは工学的および工業的に重要な課題となっている.良く知られているように,層流域の流れは乱れがない.それゆえ,抵抗低減を図るためには壁面における流体の滑りを利用することが効果的と言える. 本研究は流体の滑りを生じさせ,層流域の流体の抵抗低減を図る新しい流路壁面の創成とその流れ場の様相を明らかにすることを目的として実施したものである.前年度において,層流域の比較的大きな抵抗減少効果を得るためには,表面が高い撥水性表面であることのみでは得られないことが明らかにされたので,今年度は表面をフラクタル構造にして撥水性をもたせることにした.今年度の本研究で得られた研究成果は以下の通りである. (1)シリコン製の供試壁面に感光性樹脂をスピンコートし,約10μm細溝を有する三種類の壁面を創成し,レイノルズ数Reが150〜770の範囲で,一側面が供試撥水性壁面の正方形管に対する管摩擦係数が最大約13%低減する抵抗減少効果を得た. (2)顕微鏡を用いた壁面近傍の流れの可視化によって,抵抗低減を生じている壁面では気液界面が形成されていることが明らかにされた. (3)安定した気液界面を有する撥水性球周りの流れが実験的及び解析的に明らかにされ,壁面と液体との間にある気液界面が流れに及ぼす影響が明らかにされ,滑りの境界条件や流動モデルが構築された. これらの結果は,層流域における流体の抵抗減少効果に新しい知見を与え,そのメカニズムの解明の一助となると考えられ,さらに今後詳細な研究が期待される.
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