Research Abstract |
これまでに,複数搬送車による物体の移送経路計画について,衝突やすれ違いの干渉を回避する最短の経路を探索する分散型経路計画方法を提案した。この経路計画法は,各搬送車が独自に搬送経路路を探索する分散型の方法である。各搬送車の経路計画では,出発点から到達目標点までの経路長を最小にする経路の探索を行うが,その際,搬送車間での干渉度合いを示すペナルティ項を経路長に加えた評価関数の最小化問題を解くことで最適な搬送経路を実現した。本年度は,生産の変更や搬送車の故障などの外乱が発生する搬送問題への,提案法の適用を可能とするアルゴリズムの改良をおこなった。すなわち,搬送終了納期を考慮した経路計画法や,故障などの原因で搬送開始が遅れたり,搬送の遅延が起こることを反映できる搬送経路計画法について研究した。従来法では,外乱が発生する度に再経路計画を行っていたが,開発したアルゴリズムを用いることにより,毎回再計画を行うことなく衝突や干渉を防ぐことが可能となった。本研究では,遅延外乱の発生の確率モデルを考案し,評価関数に反映することで,搬送時間への遅延外乱を考慮した実際的な搬送車の経路計画が可能となった。本研究では,搬送地点候補(ノード)143の実規模の半導体工場を想定し,搬送車数を最大20台まで増加させて干渉のない経路計画の立案が,従来法よりも短時間で作成できることを確認した。 以上に述べた提案法の搬送納期と遅延外乱への適用性を検証するため,実験システムによる確認テストを行った。すなわち,提案した計画手法を実機へ適用する際に不可欠な,複数搬送車問での搬送経路情報の伝達機能を搭載した5台の小型マイクロロボットが,51ノードからなる搬送経路上走行する移送システムを構築した。このシステムでは,非同期な情報交換により各搬送車が搬送指令に基づき独立して搬送経路の計画を作成することができる。この実証システムを用いて,種々の移送指令に基づき搬送車が走行する際,納期設定や遅延外乱を発生させて開発したアルゴリズムを適用した実験を行った。その結果,実時間での計画機能および,衝突やすれ違いの干渉回避機能を確認した。また,生産計画と搬送計画の連携についても2つのプロセスと3台の搬送車からなる実験用生産システムを構築し,本研究のアルゴリズムを適用して有効に作用することを確認した。
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