Research Abstract |
容器内に音を放射したときの残響時間から容器の内表面積を推定し,容器内に置いた物体の表面積を測定するという原理の表面積計について,実験的検討を行った. 上記の測定原理が成り立つためには,容器内の音場が,十分な拡散音場となっていることが必要である.この条件を満足するために,容器の形状,音源,音圧検出法,対象物体の支持法,放射音などについて総合的に検討を加えた.最終的に,残響室の形状を模した不整形の容器を作製し,圧電式スピーカーおよびコンデンサーマイクロホンをそれぞれ3個ずつ使用して,測定実験を行った.残響時間測定には,放射音として帯域雑音を用い,ISOの規定するノイズ断続法を用いた.この測定装置によって,塩化ビニールなどの比較的吸音率の大きい材質であれば,理論通りに表面積が測定できることが確かめられた.しかし,測定対象物体の寸法が大きくなると,拡散音場の前提が崩れるため,大きな誤差が発生することも分かった.また,測定装置は,測定対象を出し入れするため必然的に開閉機構を有するが,この機構の気密性の僅かな変動が極めて敏感に測定値に影響し,金属など吸音率の低い対象については,表面積変化がバラツキに埋もれてしまうことが分かった. 実用的な表面積計を実現するためには,より徹底して拡散音場を実現することが必要であり,現在,音源・マイクロホン・測定対象の相対位置関係を変化させながら空間的・時間的な平均を取る方法を検討している.また,金属などの吸音率の低い対象に関しては,容器の音響インピーダンスの位相角を利用する方法が適することを実験的に確認し,この方法についても今後実験を進める予定である.更に,容器の気密性に強く影響を受ける性質は,逆に,容器の漏洩検出原理としての有効性を示唆するものであり,漏洩検査装置への応用の検討も開始した.
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