Research Abstract |
高齢運転者の道路標識判読およびそれにともなう運転挙動を,仮想空間創出技術を応用した道路空間評価システム(VERS-III:Virtual Evaluation system for Road Space Version III)を用いて分析し,超高齢化社会を迎える我が国において,いままで配慮されていなかった高齢運転者の安全と円滑な運転に配慮した道路標識の設計基準の改善に関する提案を行うことを目的とした.この研究では,道路上で迅速な判断と運転行動を必要とする道路分岐点での標識に関して,高齢運転者の標識判読力と運転挙動を分析評価した. ジャンクション分岐部とインターチェンジ出口部の2種の道路分岐点の案内標識について,(1)標示内容,(2)標示様式,(3)文字などの大きさ,(4)色彩などを変えた数種類の代替案をVERS-III上に作成し,それぞれを高齢運転者(延べ90名)と若年運転者(延べ60名)に模擬走行させ,測定された走行速度,アクセル使用度,ハンドル角などの運転挙動や,心拍数,注視点などの生理的反応を分析評価し,正しい分岐判断を導き,心理的圧迫が少なく,速度低下など交通錯綜の原因となる要因を低減させ,安全で円滑な走行を可能にする標識設計代替案を選択すると同時に,若年層を含めた年齢層による運転挙動の変化についても考察した. その結果,(1)高齢運転者は若年者に比べて標識判読のための速度低下が大きくなること,(2)特に,70歳以上の高齢者の運転挙動には注意を要すること,(3)文字の大きさが高齢運転者の標識判読能力に大きく影響すること,(4)一度に与える情報量についても制約が大きいこと,(5)緑,青,白の他に多くの色彩を用いることには抵抗があることなどが判明したので,これに基づいて標識設計改善について具体的提案を行った.
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