Research Abstract |
初めに,基材加熱に起因する遷移現象の実像解明に取り組んだ。このため,基材表面酸化膜の形成に伴うナノレベルでの表面性状変化を調査し,粒子偏平に対する粒子/基材界面ぬれ環境変化の影響について考察した。具体的には,大気中で加熱処理を加えたステンレス鋼基材表面に対し,オージェ電子分析装置による酸化物材質同定および酸化物層厚さの計測,ならびに走査型プローブ顕微鏡によるナノレベルでの表面粗さ計測を実施した。その基材を用い,大気中大気圧条件下で室温状態に保持した基材上に溶射し粒子捕集を行い,得られた基材表面微視性状変化,粒子偏平形態,表裏面微視組織および基材加熱処理条件間の相互の関連性を吟味した。次に,雰囲気圧力変化に起因する遷移現象の実像解明に取り組んだ。このため雰囲気圧力の減少に伴う各種材質粒子の偏平挙動を系統調査し,得られた結果を粒子材質との関係で整理し,粒子材質と雰囲気圧力との関係性を考察した。 その結果,加熱に伴う基材表面変化は,酸化としての化学変化は僅少であり,むしろ酸化に伴うナノレベルでの表面粗さ,とりわけ,平均粗さ以外の粗さ形状の変化に起因するぬれ性変化が粒子偏平形態変化に対し支配的に関与すること,雰囲気圧力の減少に伴い偏平形態の遷移的に変化する現象の存在すること,などを明らかにした。また,基材温度場および雰囲気圧力の変化に起因する遷移現象を3次元遷移マッピングとして表記し,同マップにより溶射プロセス制御化への指針確立の可能性を示した。さらに,基材温度,雰囲気圧力の両変化の根底には,動的ぬれが根本的な支配因子として関与するとの普遍的知見を確立した。
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