2005 Fiscal Year Annual Research Report
再生医療用における腎臓組織の新規構築培養法および機能評価
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15360434
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
王 碧昭 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (80261775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 明 東海大学, 総合医学研究所第三部門, 教授 (60307296)
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Keywords | TGFβ1 / 発生期後腎 / 尿管芽 / 腎糸宮体 / MMP / 毛細血管 / angiogenesis / vasculogenesis |
Research Abstract |
未来型の腎組織化を構築するため、本研究は、発生期の後腎を材料とし、in vitroの環境および流動培養条件でろ過機能を司るネフロンの形成を目的とする。発生期ネフロンの形成は二つ別々の始原である尿管芽とその周辺の間充織細胞が、異なる段階で相互作用により構成される。発生初期では、尿管芽先端が分岐が起こりながら、尿管芽先端周辺の間充織が凝集し、上皮化される。中期では、尿管芽先端の細かい分岐が持続しながら、上皮化された間充織細胞がコンマ、Sシェイプを経て、糸球体を形成する。後期では、糸球体および尿細管が融合し、其々の糸球体および尿細管に多数な毛細血管が生えてきた。しかし、どの段階でどの因子の作用で、尿管芽の分岐と毛細血管の進入を支配できるか、まだ不明である。今年度はこれらの機序を解明し、以下のことを明らかにした。 (1)マウス発生期(胚性E12,E13,El5,E17)の後腎組織から組織切片および遺伝子を用い、成長因子であるTransforming growth factor β(TGF-β)およびMatrix metalloproteinase (MMP)両遺伝子発現量の時間的推移を調べた。その結果、発生の進行に伴い、後腎中のTGFβ1遺伝子発現量が増加し、その局在は尿管芽周囲にあった。一方、MMP14が尿管芽の先端に局在を示した。興味深いことは、TGFβ抑制剤で処理した後腎ではTGFβ1と血管芽細胞マーカーであるFLK1の遺伝子発現がともに減少し、蛍光観察では、E13後腎に体積と尿管芽分枝の増加、E15に尿管芽の不均一な分枝と管の肥大化が観察された。これらの現象により、TGFβ1は尿管芽の分枝と糸球体の血管新生両方とも関っており、制御調整の役割を果たしていることを明らかとなった。これらの知見に基づき、TGFβ1はin vitroで後腎の培養に応用することができる。 (2)腎臓糸球体毛細血管の由来は外因説と内因説の二つの理論が分かれている。外因説は後腎外からの血管前駆細胞の流入および血管の侵入によりかっ間が形成されるというangiogenesis理論であり、内因説は後腎内部の間葉系が血管前駆細胞に分化し、血管を形成するというvasuculogenesis理論である。糸球体の構築に血管新生因子の添加時期は、外因説や内因説により異なるため、外因説と内因説を検証した。発生期後腎の組織の凍結切片を用い、血管発生初期、中期、後期および管腔形成時のマーカーであるFlk-1,Tie-2,α-SMAの蛍光、非蛍光(DAB)染色を行いながら、各時期の遺伝子発現量の推移を調べた。その結果、Flk-1は初期に尿管芽先端の間充織で発現し、徐々に尿管芽を沿って周辺に増えたが、中期に糸球体外部に移行し、最後は糸球体内部に移行した。Flt-1,Tie-2が初期に発現しないが、中期から発現する。一方、α-SMAが大血管が進入してから管腔に発現する。これらの事実により、腎臓毛細血管は発生初期に外因説のAngiogenensisであるが、発生中期に入ってから外因説のAngiogenesisと内因説のVasculogenesis両方とも働いていることを初めて明らかになった。
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