2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境変動への生態的・遺伝的応答:サクラソウ属植物をモデルとした研究
Project/Area Number |
15370008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鷲谷 いづみ 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40191738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西廣 淳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60334330)
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Keywords | サクラソウ / ユキワリソウ / 環境変動 / 馴化 / 自然選択 / 隠蔽的自家和合性 / 異型花柱性 / QTL |
Research Abstract |
1)北海道日高地方のサクラソウ自生地で、光環境の異なる場所に生育する4クローンから採集した複数ラメットを、2段階の異なる光処理区で生育させ、光合成・蒸散に関わる生理的特性をクローン間で比較した。その結果、光処理を開始した当年のラメットではそれらの特性の馴化特性にクローン間変異が認められたが、前年から光処理を継続していたラメットでは変異が認められなかった。したがって処理1年目に認められたクローン間変異はラメットの前歴を反映しており、光合成に関わる生理的特性には、ほとんど遺伝的な変異がないことが示唆された。 2)トラマルハナバチの女王を用いた網室内での実験により、花の空間配置が花粉を介して遺伝子流動に及ぼす影響を父性解析の手法を用いて把握した。また、花の中での葯と柱頭の高さに対する自然選択を測定するため、送粉者の訪花頻度が高い林床の個体群および訪花頻度の低い草原の個体群内に、葯と柱頭の高さに変異のある複数ジェネットからなる実験個体群を用意し、予備的な実験を実施した。 3)部分的自殖能をもつ長花柱クローンで、自家受粉後および適法受粉後の花粉管伸長速度を測定した結果、自家花粉の花粉管伸長速度が有意に遅いことを確認し、隠蔽的な自家和合性であることが示唆された。また、野外における自殖後代の近交弱勢は、実生の出現と成長の段階に強くはたらくことが明らかとなった。自殖能の異なる長花柱クローンを用いて、QTLマッピングのための交配家系を作成した。 4)浅間山の斜面調査地の複数ミクロサイトにおいて、光、土壌水分、温度条件とユキワリソウの分布状況、個体数、個体サイズを測定した。その結果、各ミクロサイトの温度条件には変動が少なく、ユキワリソウの分布とサイズは主に光条件に依存していた。すなわち、ユキワリソウは明るい光環境を要求することが明らかとなり、草丈が低いユキワリソウの生存にとっては、隣接する植物との光を巡る競争が重要であると推察された。来年度以降の遺伝子流動の研究に備えて、マイクロサテライトマーカーの開発を行い、マーカー数個の実用化の見通しをたてた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Okayama, Y., M.Nagai, I.Washitani: "Testing the 'assortative mating' hypothesis on a variation maintenance mechanism for flowering time within a forest-floor population of Primula sieboldii."Plant Species Biology. 18(1). 1-11 (2003)
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[Publications] Ishihama, F., C.Nakano, S.Ueno, M.Ajima, Y.Tsumura, I.Washitani: "Seed set and gene flow patterns in an experimental population of an endangered heterostylous herb with controlled local opposite-morph density."Functional Ecology. 17(5). 680-689 (2003)
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[Publications] Watanabe, A., K.Goka, I.Washitani: "Effects of population spatial structure on the quantity and quality of seeds set by Primula sieboldii (Primulaceae)."Plant Species Biology. 18(2-3). 107-121 (2003)
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[Publications] Ueno, S., Y.Tsumura, I.Washitani: "Cost-effective method to synthesize fluorescently labeled DNA size standards using cloned AFLP fragments."BioTechniques. 34(6). 1-3 (2003)
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[Publications] Ueno, S., I.Washitani, Y.Tsumura: "Development of microsatellite markers in Primula sieboldii E.Morren, a threatened Japanese perennial herb."Conservation Genetics. 4(6). 809-811 (2003)
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[Publications] Noda, H., H.Muraoka, I.Washitani: "Morphological and physiological acclimation responses to contrasting light and water regimes in Primula sieboldii, an endangered clonal herb in Japan."Ecological Research. 19(3)(in press). (2004)